王位戦、藤井聡太ストレート決着も4局すべてにドラマあり

2020年8月21日 05時55分

木村一基前王位(右)を破り、感想戦で対局を振り返る藤井聡太新王位=写真はいずれも20日午後、福岡市中央区の大濠公園能楽堂で

 藤井聡太新王位(18)が木村一基前王位(47)を下し、史上初の10代での二冠を達成した第61期王位戦7番勝負。星の上ではストレート決着だが、毎局の中にドラマがあった。(樋口薫)

◆第1局 藤井、最善の寄せ

 愛知県豊橋市での第1局は、先手の藤井が得意戦法「角換わり」を採用、一直線の攻めでペースを握った。最終盤、追い詰められたかに見えた木村が受け(守り)の勝負手を放ち、藤井の攻めが一手でも途切れれば逆転という緊迫した局面に。ここで藤井は腰を落として考え、見事に最善の寄せを選んだ。先勝したものの、藤井は初の2日制対局に疲労困憊。「体力面に課題が残った」と話した。

◆第2局 木村、重圧でミス

 札幌市での第2局は、木村の王位獲得の原動力となった「相掛かり」の戦型に。あえて藤井の飛車を成らせて反撃する木村の構想が実り、中盤ではっきりと優勢になった。しかし劣勢の藤井は離されず、ぴたりと追走。その重圧に木村が間違えてしまう。
 痛恨の逆転負けを喫した木村は、終局後に「わけが分からなくなった」と悔やんだ。シリーズ終了後、藤井は「常に苦しい形勢が続いていたので、勝てたのは大きかった」と、一番大きな勝利に本局を挙げた。

王位戦第4局の感想戦で、ともに対局を振り返る藤井聡太新王位(左)と木村一基前王位

◆第3局 木村好機を逃す

 神戸市での第3局は「相矢倉」で、堅さの木村とバランス重視の藤井という構図になった。攻めの主導権を握った藤井に、「受け師」木村は徹底抗戦。藤井には珍しい、寄せでのミスを誘う。しかし一瞬のチャンスを木村はつかみ切れず、立て直した藤井が3連勝。
 感想戦で、逆転の可能性のあった手を指摘され、木村は「指さなくてはいけなかった」と漏らした。対局中、その手を見抜いていた藤井は「負けにしたと思った」と冷や汗をぬぐった。

◆第4局 藤井、決断の飛車切り

 福岡市での第4局は、第2局と同じく「相掛かり」戦に。木村が序盤から動いて藤井の飛車を攻めたが、藤井は封じ手で大事な大駒の飛車と銀を交換する飛車切りを決断。逆に木村の大駒を標的に攻め続けた。木村は中央から藤井玉に迫ったが、藤井は的確にしのぎ、シリーズ最短の80手で木村を投了に追い込んだ。
 シリーズを通し、藤井は「初めての2日制の対局で、一手一手自分なりにしっかり考えて指せた。内容的には押されている将棋も多かったので、4連勝は望外の結果」と控えめに振り返った。木村は「どの対局も頑張ったが、少し力が足りなかった。藤井さんはミスが少なかった」と総括した。

 3つの戦型 今シリーズは、先手、後手とも飛車を元の位置に据えたまま駒組みを進める相居飛車戦で戦われたが、3つの異なる戦型が登場した。第1局の「角換わり」は序盤で角交換して戦う戦型。互いに角を持ち駒にするため、慎重な駒組みが要求され、近年、最も流行している。第2、4局の「相掛かり」は角を交換せず、飛車先の歩を進める戦型。江戸時代から指されており、愛用する棋士も多い。第3局の「矢倉」はもともと矢倉囲いと呼ばれる堅陣を組み合って攻め合う戦型だったが、近年では、組み合う前にどちらかが急戦を仕掛ける戦い方が大流行している。

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