<ふくしまの10年・コットン畑は紡ぐ>(9)遊びと学び 奪われた子へ

2020年8月21日 08時11分

綿繰りの道具について説明する富田久美子さん=いわき市で

 いわき市の元教員、富田久美子さん(66)は仲間とともに、「天空の里山」(同市四倉町)で栽培したオーガニックコットンを糸に紡いだり、織物にしたりする活動をしている。
 木製の綿繰り機や糸紡ぎ機で時間をかけて作業する。子どもたちに教えることもある。
 二〇一一年三月十一日の東日本大震災の時には市内の小学校で勤務していた。「三月二十三日が卒業式の予定だったけどできなかった。四月四日は午前中が入学式で午後が卒業式だった。避難していて卒業証書を渡せない子もいた」
 東京電力福島第一原発がある大熊町などから避難してきて、ランドセルや着替えがない子もいた。避難指示が出ている地域の学校の教員が、受け持っていた子どもたちを捜すため学校を訪ねてくることもあった。
 八月に、延期されていた異動が発令され、二本松市内の小学校に転勤となった。局地的に放射線量が高いホットスポットが市内にもあり、校庭やプールは一年間使用禁止となった。
 「すごくきれいな校庭がある学校でしたが、桜とか植えてある木は全部抜いて穴を掘って埋めた。丸裸です」。外で遊べないために肥満児が増え、ゲームなどで、目が悪くなった。避難がきっかけで離婚した家庭も少なくなかった。
 定年退職後に出会った小学生は津波で家と父親を失い、自分の部屋で寝られなくなっていた。心の痛手は長く続くと感じた。
 新型コロナウイルスで全国一斉休校となった今とあのころが重なる。福島の子どもたちは年齢によっては二度にわたって、十分に遊び、学ぶ機会を奪われたことになる。「震災の年に小学校に入学した子どもたちが、中学卒業する時にコロナに見舞われている。かわいそうだよね」
◇ご意見はfukushima10@tokyo-np.co.jpへ

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