喜寿に初作品集 人生つづる書 両手のない書家・小畑延子さん 31日から銀座で個展

2020年8月22日 07時04分

作品集を開き、収録作への思いを語る小畑延子さん=台東区で

 事故で両手を失い、筆を両腕で挟んで創作を続けてきた江戸川区の書家、小畑延子(のぶこ)さん(77)が、初めての作品集を出版した。資金集めにはインターネットで支援を求めるクラウドファンディングも活用。「感謝の気持ちを伝えたい」と31日から、出版記念の個展を中央区銀座で開催する。 (井上幸一)

作品集に収録されている「天命」(小畑延子さん提供)

 小畑さんは、五歳のときに製材所の機械で両手のひじから十センチ先を切断する事故に遭った。中学一年で書道を始め、二十代で日展に入選。体全体を使い、好きな言葉をダイナミックに表現する作風で知られる。
 作品集のタイトルは、人生の軌跡を示す「轍(わだち)」。新作十八点をはじめ、百点を収録した。それぞれに小畑さんや所有者らが、短い文章で作品への思いを添えている。
 本の最初に登場する文字は「天命」。両手を失った人生の旅の始まりを表した言葉だ。最後は「栴檀香風(せんだんこうふう)」。巡り合った人々の香りが、恵みになり、心の糧になったとして、ありがとうの意味を込めた。俳優の故原田芳雄さん宅に飾られた「遊」も掲載され、「はらわたを揺さぶる野太い唸(うな)り声さえ聞こえてきそう」と、生前の原田さんの感想がある。
 小畑さんは「喜寿となり、自伝とは別に、自分の書で人生をつづりたかった」と作品集への思いを語る。クラウドファンディングでは九十二人から百四十万円余が寄せられた。さらに、ネットを介さない支援も百四十八人からあった。
 「書家として、手がないことに注目されるのは葛藤もあった。仕方がないけれど…」と明かす小畑さん。「作品集は、これまでの整理で、集大成ではない」とし、「人生の持ち時間は短くなったが、今は書を楽しんでいる。もうちょっと年をとったら、(手のないことを)外して見てもらえるかな」と展望する。
 個展は三十一日〜九月五日、「ギャラリームサシ」(銀座一の九の一)で。収録作を中心に三十点ほどを展示する。午前十時〜午後六時(最終日は午後四時)。入場無料。問い合わせは、同ギャラリー=電03(3564)6348=へ。作品集は五千円(税別)で、問い合わせは皓星(こうせい)社=電03(6272)9330=へ。

原田芳雄さん宅に飾られた「遊」の前で語り合う小畑さん(左)と原田さん(中)(小畑延子さん提供)


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