香港で教科書の締め付け強化 社会運動や歴史の記述削除相次ぐ

2020年8月23日 06時00分

6月、香港で教育現場への当局の圧力に抗議して人間の鎖をつくる中学生ら=ロイター・共同

 【上海=白山泉】中国政府による統制が強まる香港で、教科書の記述から社会運動や中国の歴史などに関する内容を削除する改訂が相次いでいる。教育現場への締め付けを強める香港政府当局に対して、一部の市民は、全体主義による監視、統制社会の恐ろしさを描いたジョージ・オーウェルの小説「1984年」で、歴史の書き換えを行う「真理省」にたとえて批判する声も出ている。

◆標的は「リベラル教育」

 政府が標的とするのは「通識教育(リベラル・スタディーズ)」の教科書。時事問題や社会的な事件について討論し多様な見方や分析力を養うもので、香港政府は2012年に大学入試科目に導入した。
 ただ、昨年の反政府デモに学生が多く参加する中で、中国政府が「教材が毒を放っている」(人民日報)として通識教育を批判。香港政府は昨年9月、任意の教科書検定制度を新たに立ち上げた。
 今回は出版社6社が8種類の教科書について検定を通じて改訂した項目を公表した。ある教科書では香港の「銅鑼どら湾書店」責任者の李波りは氏が香港から本土に連行された事件について、風刺漫画とともに取り上げていた。教育局の検定を受けた後は、漫画が削除され「李氏は自分の意思で中国本土に行った」と説明する記述に置き換えられた。

◆「文化大革命」「三権分立」も

 さらに「文化大革命の過程と影響」や「三権分立の定義」などの記述も削除され、「民主派」という言葉は「非建制派(非親中派)」に書き換えられた教科書もあった。香港の雨傘運動で市民が道路を埋め尽くした写真が削除されるケースもあり、通識教育を担当する教諭の田方沢でんほうたく氏は香港メディアに「政治的な理由により、政府側の観点に立った資料が増強されたことが疑われる」と語った。

◆当局「改定自体は出版社」と釈明

 こうした批判を受けた教育当局は「あくまで専門家の意見を提供して教科書の質を改善するものであり、改訂自体は出版社が行っている」と釈明した。
 ただ、6月末に施行された国家安全維持法(国安法)は、学校への「宣伝、指導、監督の強化」を香港政府に義務付けている。現在、検定を受けるかどうかは出版社の任意だが、親中派の香港紙は「教科書の内容が国安法に触れるかもしれず、当局に審査を促さなければいけない」とする教育関係者の話を伝えた。

関連キーワード

PR情報