週のはじめに考える 憲法を尊重してますか

2020年8月23日 07時45分
 第二次内閣発足以降の安倍晋三首相の連続在職日数があす大叔父の佐藤栄作首相の二千七百九十八日を超え、史上最長となります。
 ほぼ一年おきに首相が交代していた第二次安倍内閣前と比べ、政治の安定は一般的には望ましいのでしょう。しかし、安倍首相の場合、有権者にはあまり歓迎されていないようです。そのことは、世論調査からもうかがえます。
 二〇一二年の第二次安倍内閣発足後、内閣支持率はおおむね40%以上を維持してきました。
 しかし、共同通信が行った七月の全国世論調査によると、内閣支持率は38・8%にとどまり、不支持率は48・5%に上ります。

◆連続在職日数が最長に

 なぜでしょう。その原因は新型コロナウイルス対応や経済政策に対する厳しい見方に加えて、首相自身の政治姿勢にあるようです。共同の調査では、支持しない人のうち四割を超える人が「首相が信頼できない」と答えています。
 支持理由でも半数近くが「ほかに適当な人がいない」との答えです。仕方なく安倍首相を支持する構図が浮かび上がります。
 振り返れば、安倍首相は「憲法を尊重し擁護する義務を負う」立場でありながら、改憲を率先して主張する一方で、現行憲法をないがしろにする政治を続けてきました。
 最たるものが「集団的自衛権の行使」容認への転換です。
 おさらいになりますが、集団的自衛権とは自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力で阻止する権利です。国連憲章でも認められています。
 しかし、憲法九条は戦争放棄と戦力不保持を定めています。ですから歴代内閣は、日本は集団的自衛権を有しているものの、その行使は九条が認める「専守防衛」の範囲を超え、許されない、との見解を堅持してきました。

◆臨時国会の召集も拒否

 その憲法解釈を、一内閣の判断で変えたのが安倍内閣です。
 憲法は国の最高法規であり、主権者たる国民が政治権力を律するためにあります。政府が解釈を勝手に変更し、憲法の趣旨を実質的に変えることなど許されません。
 さらに、安倍内閣は「敵基地攻撃能力の保有」にも踏み込もうとしています。地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」(地上イージス)の配備計画の撤回によって生じるミサイル防衛の「空白」を、敵のミサイル発射基地を直接攻撃する能力を持つことで埋めようというのです。
 敵基地への攻撃について、歴代内閣は「座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは考えられない」と憲法が認める自衛の範囲内とする一方、実際に攻撃できる装備を持つことは「憲法の趣旨ではない」としてきました。
 集団的自衛権と同様、憲法解釈を変更して敵基地攻撃能力の保有に転じれば、戦後日本の専守防衛政策から大きく逸脱します。
 臨時国会召集要求の拒否も憲法をないがしろにする行為です。
 憲法五三条は、臨時国会について「(衆参)いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」と定めますが、安倍内閣は過去二回、憲法に基づく召集要求を無視しています。
 一五年は召集せず、一七年は要求を三カ月以上放置し、召集日に衆院を解散しました。今年も野党が憲法に基づいて召集を求めていますが、与党は応じていません。
 新型コロナや豪雨災害への対応など、議論すべき課題は山積しています。にもかかわらず、国会を開こうとしないのは「桜を見る会」や森友・加計学園を巡る問題など数々の政権疑惑も厳しく追及されるため、それを避けたいのでしょう。
 首相の健康状態は気掛かりですが、だからといって、国会を開かなくていいわけではありません。
 かつては「安倍一強」とされた首相の勢いにも陰りが見え始めていますが、この七年八カ月の間、与党議員や官僚の間に首相ら政権中枢の意向に過度に配慮する忖度(そんたく)がはびこり、財務官僚が公文書偽造に手を染めるに至りました。

◆統治機構が「根腐れ」を

 法務官僚が違法な賭けマージャンをする、財務次官が女性記者にセクハラ行為をする、「統治機構の根腐れ」とも言える事態も続きます。これらは緊張感を失った長期政権の弊害にほかなりません。
 現職衆院議員の任期は来年十月ですが、早ければ今秋にも解散・総選挙の可能性があります。
 次の選挙は、憲法を大切にする政治への転機としなければなりません。一気に変わらなくても、選挙結果によっては政治に緊張感が生まれます。当たり前のことですが、それこそが長期政権の行き着く先を目の当たりにした私たち有権者が、胸に刻むべき教訓です。

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