温暖化ストップ、コロナ対策の延長では無理 都市封鎖「ほぼ効果なし」

2020年8月24日 05時50分

<地球異変・「コロナ後」と温暖化(上)>

4月下旬からの大型連休中、東京駅の新幹線ホームは行楽や帰省の客がなく閑散とした状況に(上)。毎年渋滞する東名高速道路の海老名サービスエリア付近(神奈川県)も車が少なかった(下)

◆移動制限でCO2排出量は3割減

 高速道路から多くの乗用車やトラックが姿を消した。4~5月、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府が全国に緊急事態宣言を出していたころだ。
 「道はガラガラ。(東名高速道路の)東京料金所は宣言前、1キロくらいの渋滞もあったのに、全然混まんかった」。魚を積んだトラックで4月に何度も東京と長崎を行き来した50代の男性運転手は振り返る。
 国土交通省によると、高速道路の毎週の交通量は4月に入ると昨年同期比で20~40%減り続けた。毎年数十キロの渋滞が各地で起きる大型連休中は70%減った。
 車、鉄道など陸上輸送の大幅な減少は、都市封鎖(ロックダウン)があった海外でも起きた。インドでは大気汚染が改善し、スモッグでかすんでいたヒマラヤ山脈がはっきりと見えるようになり、話題になった。
 「4月中旬、世界の二酸化炭素(CO2)の排出量は前年よりも30%減少した可能性がある」-。英リーズ大などの研究チームは8月7日、123カ国の排出状況を分析した結果を英科学誌に発表した。人の移動が制限されてガソリンの使用量が減り、地球温暖化の原因となるCO2を主とした温室効果ガスの排出量が大きく下がった。

◆それでも大気中のCO2濃度は過去最高

 だが、温暖化を食い止めるには焼け石に水だ。排出がゼロになったわけではなく、世界気象機関(WMO)は5月の大気中のCO2濃度が過去最高を記録したと発表。「(大気中の)CO2の蓄積は、埋め立て処分場のごみのようなもの。排出し続ければ積み重なる」と、観測に関わる研究者のコメントを添えた。
 各国で経済活動が再開すれば、CO2の排出は増える。前述の研究チームは「アジアの一部で大気汚染がコロナ前の水準に戻りつつある」と指摘。2021年末まで一部で都市封鎖が続いたとしても、「長期的な気候変動に、ほとんど影響しない」と結論付けている。
 国際エネルギー機関(IEA)は、20年のCO2排出量は前年比で8%近く下がると見込む。減少幅は過去最大で、08年のリーマン・ショック後の排出削減の倍の規模だ。
 温室効果ガスの排出削減は、温暖化を防ぐために不可欠な道。国際社会がパリ協定で定めた「産業革命以降の世界の平均気温の上昇を1.5度に抑える」という目標達成には、「前年より8%減らすこと」を毎年繰り返さなければならない。

◆EVを増やせば排出は減らせる

 しかし、経済活動の制限は、世界全体で企業倒産と失業者の増加といった大きなマイナスをもたらした。日本でも5月の完全失業率が2.9%と3年ぶりの高水準となり、その影響は長期化する恐れがある。
 「活動の制限で排出を減らすのは、経済的に大変なこと。新型コロナ対策の延長では成功しない」。国立環境研究所地球環境研究センターの江守正多えもりせいた副センター長は、温暖化を抑えるためには、石炭や石油などの化石燃料に依存する社会の転換が必要だと訴える。
 「再生可能エネルギー由来の電気自動車(EV)を増やせば、移動を我慢しなくてもCO2排出は減らせる。気候変動対策は前向きに社会を進化させていくことなんです」(福岡範行)
  ◇
 コロナショックは、温暖化対策を考える上でも避けて通れない通過点となった。3回に分けて、見えてきた課題を探る。
◇シリーズ「地球異変」へのご意見、情報を、取材班までお寄せください。
 [E-mail] 東京新聞「地球異変」取材班

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