東京パラへ1年 「共生社会」着実に前へ

2020年8月24日 08時06分
 東京パラリンピックの開幕まで一年となった。新型コロナウイルスの感染拡大で大会の先行きは見通せないが、障害者と健常者の「共生社会」へ向けた歩みは、着実に前へ進めたい。
 パラリンピックを目指すアスリートにとって、コロナ禍は健常者以上に大きな試練となった。
 下半身まひで車いすを使う選手は、肺機能が弱いケースがある。感染すれば重症化する可能性が否定できない。
 視覚障害がある場合、周囲の「三密」状態を確認するのが難しい。街中で手すりや点字表示板を触れるのも、感染リスクを高めてしまう。
 健常者以上に外出を控え、練習もままならないアスリートが多かったのではないか。
 何より、大会開催が不透明なことが不安の中心にある。マイナーだった競技でも、大会が契機となって企業などが支援し、練習に専念できる環境が整ってきた。
 企業が業績悪化や大会の不透明さを理由に、安易に支援を縮小することのないよう求めたい。
 スポーツだけではない。ここ数年、大会の理念に合致する健康や人権への取り組みは、世界の先進レベルを目指して進んできた。
 受動喫煙の害を防ぐ改正健康増進法。性的少数者(LGBT)の差別を禁じる東京都の人権尊重条例。そして、障害者差別解消法もその一つである。
 しかしコロナ禍で、理念に逆行する事態が起きている。二月から六月に解雇された障害者は約千百人で、前年同期より16%増えた。同条件で比較できる健常者の統計はないが、障害者がより安易に解雇されていないか懸念がある。
 また、障害者の法定雇用率を0・1%引き上げて来年一月から2・3%とする案を巡っては、経営者側が先送りを求めた。テレワークなど働き方を工夫し、雇用を進めるべきだろう。
 コロナ禍による社会の分断は、私たちの身の回りでも起きているかもしれない。障害者が外出先でちょっとした手助けを必要とする場面で、健常者が過敏に感染を恐れれば、コミュニケーションが取りにくくなるからだ。
 世の中のあらゆる場面で、新たな生活スタイルの模索が続く中、障害者が暮らしやすい「バリアフリーの新様式」の議論も必要だ。
 大会開催がぐらついたとしても、多様性(ダイバーシティー)と包括(インクルージョン)は社会の基礎として大切にする。その目標を再確認したい。

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