CO2排出減もリバウンドどう回避 「景気」に「温暖化」組み合わせ対策

2020年8月25日 05時50分

<地球異変・「コロナ後」と温暖化(中)>

 「リーマン・ショックの時のように、CO2(二酸化炭素)排出のリバウンドを繰り返すことはあってはならない」
 小泉進次郎環境相は6月12日、環境白書を発表する会見で力説した。念頭にあったのは、豪雨や熱中症のリスクを高める温暖化が進んでいる現状だった。

◆リーマン・ショックで大幅減少も

 2008年秋に米国で起きたリーマン・ショック(金融危機)により、製造業を中心に世界的に需要が急減。日本でも自動車産業を中心に工場閉鎖や期間工のリストラの波が押し寄せ、翌09年の世界のCO2排出量は大きく減った。
 しかし、危機からの脱却を目指す各国の景気対策や経済活動の再開で、CO2排出が急増する「リバウンド」状態を招くことになった。国際エネルギー機関(IEA)によると、CO2排出量は09年、前年比で4億トン減ったが、10年は前年より17億トン増えた。
 新型コロナウイルスの影響を受ける20年の排出量(IEAの予測値)は26億トン減で、削減量はリーマン時の約6倍、過去最大となる見込みだ。だが金融危機時と同様、CO2排出の減少は一時的となる可能性が高い。

◆新潮流「グリーン・リカバリー(緑の回復)」

 リバウンドという事態を避けようと、各国ではコロナ禍で落ち込んだ景気対策に温暖化対策を組み合わせる動きが広がっている。脱炭素化を柱とした「グリーン・リカバリー(緑の回復)」という新潮流だ。
 「コロナ後の経済立て直しに際し、私たちは賢く投資をする必要がある」
 欧州委員会のフォンデアライエン委員長は4月下旬、未曽有の事態から経済を復興させるためには、環境政策の優先度が高いと強調した。再生可能エネルギーのさらなる普及や環境効率の高い建築物への改修などを進めてCO2削減を目指す「欧州グリーンディール」が、「景気回復のエンジンになる」と訴えた。
 フランスでは、経済活動の制限により経営危機に陥った航空会社・エールフランスへの支援の条件に、国内線のCO2排出量を24年までに50%削減することや、排出量の少ない機体への更新を求めた。カナダでは、大企業向けの雇用支援策を行う条件に、気候変動関連の情報開示を定めた。
 日本はどうか。環境省は20年度補正予算で飲食店などの事業者が高効率の換気システムを導入する際の支援事業(30億円)などを盛り込んだ。担当者は「脱炭素化社会への移行は当然意識している」と話す。

◆環境、温暖化シフト見られぬ日本

 しかし政府全体では、企業の売り上げ減に対する「持続化給付金」や観光需要喚起を狙った「Go To トラベル」など従来型の施策が中心。7月に閣議決定された21年度予算編成の指針「骨太の方針」も、環境や温暖化対策にシフトする傾向はなかった。

小泉進次郎環境相(右上)は「気候危機」を宣言したが、政府は「骨太の方針」をまとめた文書(左)で温暖化対策の強化にシフトせず。欧州委員会のフォンデアライエン委員長(左下、ロイター=共同)は経済回復と脱炭素化の両立を訴える

 「日本は各国に比べ出遅れている」と、世界自然保護基金(WWF)ジャパンの山岸尚之気候エネルギー・海洋水産室長。「コロナ前の経済に戻す発想ではなく、グリーンな景気対策で脱炭素化に向かう大きな流れをつくるべきだ」と指摘した。(石川智規)
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