参院選買収事件で初公判 河井前法相夫妻、並んで証言台に…「票の取りまとめ趣旨ではない」

2020年8月25日 13時28分
 国会議員夫妻が100人もの地元議員らに現金をばらまいたとされる異例の買収事件の「100日裁判」が、東京地裁で始まった。昨夏の参院選広島選挙区を巡り公選法違反罪に問われた前法相の衆院議員河井克行被告(57)と、妻の参院議員案里被告(46)は25日、初公判の法廷でそろって無罪を主張した。現金の趣旨は何か。自民党本部からの破格の資金の使途は―。支援者らからは「真実を話してほしい」との声が上がる。

河井克行(左)、案里両被告

◆克行被告、案里被告との共謀を否定

 6月に東京地検特捜部に逮捕されて以来、河井夫妻が約70日ぶりに公の場に姿を現した。濃紺のスーツ姿で少しやせた様子の克行前法相は法廷に入る際、1礼した後、しっかりとした足取りで廷内へ。続いて案里議員がパンツスーツ姿で入廷し、裁判官や傍聴席に頭を下げて被告人席に着いた。マスクを着けた2人の襟元に、国会議員バッジはなかった。
 罪状認否で夫妻は並んで証言台の前に立った。職業を尋ねられると、克行前法相は「衆院議員です」と大きな声で答え、案里議員は「参院議員でございます」と静かに話した。
 克行前法相は用意していた紙を見ながら、「多くの皆さまにご心配とご迷惑をおかけしたことについて、深くおわび申し上げます」と頭を下げた。その後、はっきりとした声で供与自体はおおむね認めた上で、「票の取りまとめなど選挙運動を依頼する趣旨で供与したものではない。河井案里と共謀したことはございません」と否認した。
 案里議員も冒頭で「有権者の皆さまや多くの方にご迷惑をおかけしました。一連の事件で大きな政治不信を招き、深くおわび申し上げます」と謝罪。手元の紙を見ながら、現金提供の趣旨を「陣中見舞い」や「当選祝い」と説明し、一部は「渡したことはありません」と提供自体を否定した。
 今回の事件は、案里議員が参院選への初出馬を表明した昨年3月以降、夫妻が広島県内の地方議員や首長、後援会関係者ら100人に配った約2900万円の意味合いが焦点だ。
 検察側は冒頭陳述で、「自民党広島県連が新人の案里議員の擁立に反対し、現職議員だけを支援することを決めていたことから、克行前法相は案里議員の選挙戦が厳しいものになると予想。付き合いのあった議員だけでなく、疎遠だった議員にもなりふり構わず現金を供与することにした」と指摘した。
 その上で、地元議員ら100人の実名を挙げながら、夫妻が現金を提供したとされる時期や場所、金額を明らかにし、「票の取りまとめを依頼する報酬だった」などと主張した。 (山田雄之)

◆地元支援者「法廷では正直に話して」

 河井夫妻が法廷で何を語るのか、地元広島県の支援者らも注目する。夫妻を支援してきた広島市の男性(57)は「昨年10月に週刊誌が選挙違反疑惑を報じて以降、2人からいまだ何の説明もない。法廷では正直に話してほしい」と話す。
 男性は夫妻の逮捕後、知人から「あなたも、いくらかもらったの?」と疑われたという。「私たち支援者がつらい目に遭っていることを、あの人たちはどう思っているんでしょうか。もう支える気にはなれません」と声を落とす。
 克行前法相から30万円を受け取った県議は、「どうして突き返せなかったのか、考えない日はない。支援者にも申し訳ない」と悔いる。
 県議は統一地方選後の昨年4月、自身の事務所を訪れた克行前法相から、「お祝いだから」と現金入りの封筒を渡されたという。
 克行前法相は案里議員の話題に触れなかったそうだが、県議は「案里さんの選挙を応援してくれという趣旨の金だと思った」と振り返る。「目上の人だし、断れなかった。でも返すべきだった。情けない」
 克行前法相とはそれっきりという。「なぜ自分のところへ来たのか。どういう趣旨で金を渡しに来たのか。法廷で真実を語ってほしい」 (小野沢健太、山下葉月)

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