現金配布は何のため? 選挙運動か政治活動か 河井前法相夫妻初公判

2020年8月25日 23時09分
河井克行(左)、案里両被告

河井克行(左)、案里両被告

  • 河井克行(左)、案里両被告
 昨年7月の参院選広島選挙区を巡る買収事件で、公選法違反の罪に問われた前法相の河井克行被告(57)=自民党を離党、衆院広島3区=と妻の参院議員案里被告(46)=同、広島選挙区=の初公判が25日、東京地裁(高橋康明裁判長)で開かれた。夫妻はいずれも「選挙運動を依頼する趣旨で現金を渡したことはない」と無罪を主張。克行前法相側は、現金を受け取ったとされる全員の刑事処分を見送った捜査手法は違法として、裁判の打ち切りも求めた。
 起訴状によると、克行前法相は案里議員が参院選への初出馬を表明した後の昨年3~8月、票の取りまとめを依頼する目的で、広島県内の地方議員や首長、後援会・陣営関係者ら計100人に計約2900万円を提供。案里議員はこのうち5人への計170万円について、克行前法相と共謀したとされる。
 100人に配られたとされる現金の趣旨が最大の争点。夫妻はいずれも現金提供をおおむね認めた上で、克行前法相は「選挙運動を依頼する趣旨ではない」、案里議員は「地方議員への陣中見舞いや当選祝い。選挙運動でなく政治活動だった」と買収を否定した。
 さらに克行前法相の弁護側は、地元議員ら100人全員の刑事処分が見送られていることを踏まえ、「検察側は立件や刑事処分をしないことを暗に伝え、利益誘導で自白を得た」と指摘。「いわゆる『裏取引』。極めて違法性の高い捜査手法だ」と公訴棄却を求めた。
 克行前法相は、案里議員の選挙運動を取り仕切ったとして、連座制の対象となる「総括主宰者」の立場で起訴されたが、この立場を否定。一方、案里議員は「夫が取り仕切っていた」と述べ、主張が分かれた。
 参院選公示前の昨年4~6月、夫妻の政党支部に自民党本部から1億5000万円が援助され、うち1億2000万円は税金からなる政党交付金だった。事件の原資との関係性が取り沙汰されたが、検察側は初公判で資金援助に触れず、原資にも言及しなかった。
 夫妻の弁護人は初公判後、地裁にそれぞれ3度目の保釈請求をした。

◆<解説>受領側の刑事処分見送り 原資にも切り込まず

 河井克行前法相夫妻が起訴された買収事件の争点は、現金の趣旨が選挙運動か政治活動かに絞られた。国会議員が選挙運動のために100人もの地元議員らに現金をばらまいていたとすれば、選挙制度を著しくゆがめるもので許されない。
 ただ、検察側の立証手法には危うさも漂う。有罪無罪を左右するのは、捜査段階で買収の意図を認めたとされる地元議員らの法廷証言。買収事件では受領側も立件されるのが通例なのに、検察側は刑事処分を見送っている。
 今後の証人尋問で供述を維持したとしても、その供述には信用性が担保されていると言えるのか。立件の見送りを条件に、検察側に都合のいい供述をしているとの疑念をぬぐうためにも、検察当局は速やかに公正な処分をした上で今後の公判に臨むべきだ。
 検察側は冒頭陳述で、夫妻が2900万円もの資金をどのように用意したのか言及しなかった。現金配布の期間は自民党本部から夫妻に破格の1億5000万円が援助された時期と重なる。
 破格の援助がなくても事件は起こり得たのだろうか。原資に切り込まないまま、真相を解明できるのか疑問だ。 (池田悌一)

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