証人120人で年またぎ必至 河井前法相夫妻の「100日裁判」

2020年8月26日 05時55分
 100人もの地元議員らに現金をばらまいたとされる大規模買収事件の初公判で、国会議員の夫妻はそろって買収の意図を否定した。25日に東京地裁で始まった前法相の衆院議員河井克行被告(57)=写真左=と妻の参院議員案里被告(46)=同右=の裁判。証人の数は約120人に上るとみられ、「100日裁判」は年またぎの長期戦になりそうだ。(山田雄之、山下葉月、小沢慧一)

◆夫妻そろって選挙運動依頼を否定

 「多くの皆さまにご心配とご迷惑をおかけしたことを深くおわび申し上げます」。罪状認否で夫妻は並んで証言台の前に立ち、逮捕前より少しやせた様子の克行前法相は、用意していた紙を見ながら頭を下げると、「案里に対する投票または投票の取りまとめなどの選挙運動を依頼する趣旨ではない」と無罪を訴えた。
 案里議員も冒頭で「有権者の皆さまや多くの方にご迷惑をおかけしました。一連の事件で大きな政治不信を招き、深くおわび申し上げます」と謝罪。手元の紙に視線を落とし、提供した現金の趣旨は「陣中見舞い」や「当選祝い」だったと淡々と述べ、選挙運動を依頼する趣旨ではなかったと主張した。
 検察側は冒頭陳述で、自民党広島県連が新人の案里議員の擁立に反対し、現職議員だけを支援することを決めていたことで、克行前法相が「案里議員の選挙戦は厳しいものになる」と予想したと主張。「なりふり構わず現金を供与することにした」などと指摘する間、克行前法相は体を前のめりにしながら耳を傾け、案里議員は目を閉じて聞き入っていた。
 検察側が地元議員ら100人の実名を挙げながら、夫妻が現金を提供したとされる時期や場所、金額を読み上げている際、メモを取っていた克行前法相が首をかしげる場面もあった。
 裁判官が閉廷を告げると、夫妻は傍聴席に深々と頭を下げ、退廷した。
 閉廷後、現金30万円を受けとったとされる県議は、克行前法相が買収目的を否定したことについて、「想定はしていた」と冷ややかに話した。
 県議は今秋、東京地裁で証人尋問に立つ予定だ。「私は案里さんの選挙を応援してくれという趣旨の金だと思っている。現金を突き返せなかった自分を正当化するつもりはない。法廷ではしっかり真実を話すことが自分の務めだと思っている」と語った。

◆コロナ考慮しビデオ尋問も

 河井夫妻の裁判は、起訴から100日以内の判決を目指す「100日裁判」の対象だが、判決は来年にずれ込む見通し。現金を受け取ったとされる地元議員や事務所スタッフら約120人の証人尋問が予定されているためだ。
 弁護側は、地元議員らが買収の意図を認めたとされる検察側の供述調書の証拠採用に同意していないため、法廷で直接問いただすことになる。東京地裁は12月中旬までに55回の期日を指定。大半が証人尋問に費やされ、検察側の論告求刑や弁護側の最終弁論を経て、判決が言い渡されるとみられる。
 また、関係者によると、約40人の証人尋問は、東京地裁の法廷と広島地裁の別室を映像と音声でつなぐビデオリンク方式で実施される見通し。地裁は刑事訴訟法に基づき、高齢や病気がある証人について、新型コロナウイルス感染症の状況も考慮し、この方式の採用を認めたとみられる。
 ただ、神奈川大の白取祐司教授(刑事訴訟法)は「現金の趣旨を争う裁判で、被買収者の供述は重要。本来なら証人の話し方や表情を直接見ながら、その信用性を判断するべきで、ビデオリンクによる映像には限界がある」と指摘している。

◆判決次第では失職

 河井夫妻は、今回の裁判の結果次第で失職する可能性がある。
 克行前法相は自身の裁判で有罪となり、罰金刑以上が確定すれば失職。案里議員も同様だが、自身が無罪になった場合でも、選挙を取り仕切った「総括主宰者」として起訴された克行前法相の罰金刑以上が確定すれば、連座制が適用され、当選無効となり失職する。
 また、車上運動員に対する違法報酬事件で「組織的選挙運動管理者」として起訴された公設秘書について、禁錮刑以上が確定した場合も案里議員は連座制で失職する。公設秘書は一審で有罪判決を受け控訴。25日に控訴審が結審し、31日に判決が言い渡される。

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