米女性参政権100年 性別や人種による差別は絶えず 不平等との闘い「今も続いている」

2020年8月26日 13時50分
 米合衆国憲法に女性参政権を定めた修正第19条が追加されて26日で100年。性別や人種による差別問題は今も絶えず、修正条項は「未完の旅の一里塚」(ニューヨーク・タイムズ社説)とされる。米各地で開かれている100周年の記念行事は、権利獲得に尽くした先人らをたたえるとともに、不平等との闘いを継承する場になっている。(米東部ペンシルベニア州ゲティズバーグで、赤川肇)

8日、米ペンシルベニア州ゲティズバーグで、女性参政権の歩みを語り合うヘイリー・キレンノックスさん(中)ら=赤川肇撮影

 8月上旬の週末、南北戦争の激戦地としても知られるゲティズバーグの公園。地元の市民団体が「修正第19条を祝う会」を企画した。男性を含む市民らが女性参政権の関連書物を囲み、参政権運動の歴史や互いの投票行動を語り合っていた。
 「彼女は信念のもとに立ち上がり、女性の権利のために人生をささげた。もっと評価されるべきだ」。元学芸員デブラ・ウェストモーランドさん(68)が敬愛の念を抱くのは、東部ニュージャージー州出身の女性運動家アリス・ポール(1885~1977年)。
 1848年に東部ニューヨーク州セネカフォールズで全米初とされる女性の権利会議が開かれた後、72年がかりで合衆国憲法に明記された女性参政権。英国で女性参政権運動に参加したポールは帰国後、州レベルでの参政権獲得という妥協策ではなく憲法修正にこだわった。逮捕や獄中での拷問に遭いながら、ホワイトハウス周辺などで非暴力の抗議活動を続け、憲法修正に反対だった当時のウィルソン大統領を翻意させた。

アリス・ポール(アリス・ポール研究所提供)

 オバマ前大統領は2016年、ポールが率いた全米女性党の施設を国定史跡に指定する大統領布告で、30代で修正条項の成立に導いたポールを「闘いの最終段階における最重要人物」と評している。
 「女性参政権は贈りものではない。勝ち取ったのです」。アリス・ポール研究所のルシエンヌ・ビアード事務局長(63)が語る。「女性は家を守るべきと考えられていた時代に、ポールらは街に出て、参政権を訴え続けた。お願いでも懇願でもない。あくまで要求だった」。政権の責任を追及し、目標を達成する。それを教訓と受け止める。
 ただ、市民団体のジェニー・デュモン代表(43)は「憲法修正で全女性の参政権が保障されたわけではない」とも強調する。修正条項は「性別による投票権の拒否、制限を禁止」しただけで、南部諸州では人種隔離政策を認めた州法に基づく識字テストや課税といった事実上の投票制限が1960年代まで続いた。ノートルダム大のクリスティナ・ウォルブレヒト教授(政治学)は「法的、超法規的な障壁が特に黒人の投票を阻んできた」と指摘する。
 「祝う会」の企画に携わった大学生の白人女性ヘイリー・キレンノックスさん(20)にとって、参政権の侵害は性別や人種だけの問題でもない。若者が野党民主党の支持基盤とされる中、トランプ大統領率いる与党共和党が若者の投票を抑制する動きを警戒している。
 女性蔑視をたびたび批判されるトランプ政権の下、家父長制社会への回帰も心配の種。「闘いは今も続いている。それを忘れないためにも、このような歴史の重要な節目を祝い続けていくことが大切」と話した。
 修正第19条の成立後、ポールは晩年まで、憲法に男女平等を盛り込む修正条項の批准を目指した。実現には至っていない。

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