安全保障政策 周辺国の理解欠かせぬ

2020年8月27日 07時20分
 安全保障政策に対して国際社会の理解を得る努力は必要か、との問いには、躊躇(ちゅうちょ)なく「必要だ」と答えねばなるまい。それが日本の「国家戦略」であり、地域の不安定化を避けることになるからだ。
 なぜ今こうしたことを言わねばならないのか。きっかけは河野太郎防衛相の記者会見である。
 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」(地上イージス)の配備計画撤回を受け、自民党は政府に事実上の「敵基地攻撃能力の保有」を提言した。
 歴代内閣は、敵基地攻撃を「座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは考えられない」としてきたが、同時に、他国を攻撃する兵器を日ごろから備えることは憲法の趣旨ではない、とも言う。
 敵基地攻撃能力の保有は従来の安保政策を転換することになり、周辺国の懸念を招きかねない。
 そこで記者が「現状では特に中国や韓国から十分に理解を得る状況ではないと思うが、理解を得るには何が必要か」と尋ねると、河野氏は「主に中国がミサイルを増強しているときに、何でその了解がいるんですか」「何で韓国の了解が必要なんですか」と答えた。
 独立国である日本が他国から安保政策への「了解を得る」必要はない。しかし、安保政策を大きく転換するのなら、国際社会から不要な疑念を招かぬよう「理解を得る」努力は必要だ。歴代内閣は政策転換に当たり、中国など周辺国の理解を得る努力を重ねてきた。
 例えば掃海艇のペルシャ湾派遣や国連平和維持活動(PKO)協力法、旧周辺事態法で、日本領域外での自衛隊活動に関するものだ。
 戦後日本は戦争放棄、戦力不保持の憲法九条の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与える軍事大国にならず、経済的繁栄と国際社会から評価と尊敬を得るに至った。
 必要最小限の実力である自衛隊を増強したり、役割を変えるのなら、それが憲法の枠内でも、国際社会から「軍事大国化の懸念」を指摘される可能性はある。
 それを避けるには、政策変更の意図を丁寧に説明して理解を得る努力をすることが賢明だ。安倍内閣が策定した「国家安全保障戦略」も「国家安全保障を達成するためには、国際社会や国民の広範な理解を得ることが極めて重要」と指摘する。国際社会の理解を得ることは日本の国家戦略だ。
 外相も務めた河野氏なら、分かっていると信じたい。語るべきは「何で了解が必要なのか」ではなく「理解を得たい」との言葉だ。

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