車いすバスケで一部選手が「出場資格なし」に…揺れる「障害」の定義

2020年8月28日 10時19分

<超える・障害者スポーツの今>

 車いすバスケットボールは、障害者スポーツの中でも世界的に人気が高い。パラリンピックでも注目が集まるこの競技で7月末、活躍してきた一部の選手が「出場資格がない」として東京大会の舞台に立てなくなる事態が起こった。問題となったのは、どのような体の状態が「障害」と言えるのか、だった。
 パラリンピックは、国際パラリンピック委員会(IPC)の基準で「資格がある」と定める障害がなければ出場できない。IPCはこの基準を2017年に発効し、競技団体に順守を求めてきた。だが国際車いすバスケットボール連盟(IWBF)は従わず、独自の基準を適用し続けていた。
 今年1月、IPCは「基準に従わなければ東京大会の実施競技から外す」と警告。IWBFは折れ、選手は医学的な診断をもとにIPC基準での評価を受けることになり、世界で9選手が「不適格」とされた。
 IPCは具体的な障害名を基準としている。一方IWBFの基準は、健常者のように走ったり片足を軸にして動いたりができない人は、プレー可能というものだった。根底には「多くの人にバスケをする機会を」との理念がある。
 IWBFは不適格となった選手を公表していないが、数人の海外選手は自ら明かした。英国代表で、18年の世界選手権優勝にも貢献したジョージ・ベーツ選手はツイッターで「私は『間違った種類』の障害者とみなされた」とつづった。
 11歳の時、けががもとで慢性的な痛みが続く複合性局所疼痛(とうつう)症候群と診断され、医師からは足を切断する選択肢も示されたという。ベーツ選手は「今再びこのつらい選択を迫られるかもしれない」とも記した。手足の切断なら「適格」となり、出場資格を得られるからだ。
 パラリンピックではかつて、障害の偽装などの問題も生じており、IPCが「障害」を厳密に定めるのも理解できる。一方、障害の有無や程度によらず同じスポーツで汗を流すのは、共生社会の理想でもある。日本連盟は、国内大会では健常者の参加を人数限定ながら認めている。

昨年5月の天皇杯準決勝でパスを回しながら攻め上がる宮城MAXの藤本怜央選手(右から2人目)=東京都調布市で

 ただ、昨年の日本選手権で11連覇した宮城MAXは障害者のみのチームだ。同チーム所属で、日本代表エースでもある藤本怜央選手は事故で右足を切断している。優勝後、「車いすを足として日ごろから扱うチームが何よりも強いと証明できた」と語った。
 後にその真意を尋ねると、こう語った。
 「共生は画期的なことで大賛成。ただ戦う集団としてこのスポーツをやる僕としては、健常者で体が自由に使えるから1番強いとはしたくなかった。戦略、戦術、それに伴うテクニカルな部分、スキルが持ち合わさって戦う競技スポーツ。それをやり続けた宮城MAXが当然強い、と言いたかっただけです」

 つぶや記 障害者、健常者という線引きはあまりしたくない。「害」の字を嫌い、「障がい」とひらがなを使う人もいる。何が障害か?とは社会的な問い掛けでもあるが、公平なルールが求められる競技では、どこかで線引きが必要になる。障害者スポーツにおいて最も答えが難しい問題だ。 (神谷円香)

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