【安倍首相、辞意表明の会見詳報】政権への疑惑「国会で答弁済み」「私物化ない」

2020年8月28日 20時15分
 安倍晋三首相が28日、辞任の意向を表明した。2012年12月の第2次政権発足から約7年8カ月。記者会見で、森友・加計かけ問題や公文書廃棄・改ざんなどの責任を問われると、「国会で答弁済み」「政権の私物化はない」などと語った。約1時間の会見では、目を充血させながら話す場面もあった。会見の要旨は次の通り。

記者会見で辞意を表明し厳しい表情を見せる安倍首相=28日午後5時19分、首相官邸で

【冒頭の首相発言】

 13年前、私の持病である潰瘍性大腸炎が悪化し、わずか1年で突然、総理の職を辞することになり、国民の皆さまには大変なご迷惑をおかけいたしました。
 その後幸い、新しい薬が効いて体調が万全となり、国民の皆さまからご支持をいただき、さらに総理大臣の重責を担うこととなりました。
 
 この8年近くの間、しっかり持病をコントロールしながら、何ら支障なく総理大臣の仕事に、毎日全力投球することができました。
 
 しかし、本年、6月の定期健診で再発の兆候が見られると指摘を受けました。その後も薬を使いながら、全力で職務に当たって参りましたが、先月中頃から体調に異変が生じ、体力をかなり消耗する状況となりました。そして8月上旬には潰瘍性大腸炎の再発が確認されました。今後の治療として、現在の薬に加えまして、さらに新しい薬の投与を行うことになりました。
 今週初めの再検診においては、投薬の効果があると確認されたものの、ある程度継続的な処方が必要であり、予断は許しません。政治においては最も重要なことは結果を出すことであります。私は政権発足以来そう申し上げ、7年8カ月、結果を出すために全身全霊を傾けて参りました。病気と治療を抱え、体力が万全ではないという苦痛の中、大切な政治判断を誤ること、結果を出せないことがあってはなりません。
 国民の皆さまの負託に、自信を持って応えられる状態でなくなる以上、なくなった以上、総理大臣の地位にあり続けるべきではないと判断をいたしました。総理大臣の職を辞することといたします。

辞意を表明する記者会見に臨む安倍首相。左端は菅官房長官

 最大の課題であるコロナ対応に障害が生じるようなことは、できる限り避けなければならない。この1カ月程度、その一心でありました。悩みに悩みましたが、4月以降の感染拡大が減少傾向に転じたこと、そして冬を見据えて実施すべき対応策を取りまとめることができたことから、新体制に移行するのであれば、このタイミングしかないと判断しました。
 この7年8カ月、さまざまな課題にチャレンジして参りました。残された課題も残念ながら、多々ありますが、同時にさまざまな課題に挑戦する中で達成できたこと、実現できたこともあります。すべては国政選挙の度に力強い信任を与えてくださった、背中を押していただいた国民の皆さまのおかげであります。本当にありがとうございます。
 ご支援をいただいたにも関わらず、任期をあと1年残し、さまざまな政策が実現途上にある中、コロナ禍の中、職を辞することになったことについて、国民の皆さまに心よりおわび申し上げます。拉致問題をこの手で解決できなかったことは痛恨の極みであります。ロシアとの平和条約、また憲法改正志半ばで職を去ることは断腸の思いであります。
 
 しかし、いずれも自民党として国民の皆さまにお約束した政策であり、新たな強力な体制の下、さらなる政策、推進力を得て、実現に向けて進んでいくものと確信しております。次の総理が任命されるまでの間、最後までしっかりとその責任を果たして参ります。そして、治療によって何とか体調を万全とし、新体制を一議員として支えて参りたいと考えております。国民の皆さま、8年近くにわたりまして、本当にありがとうございました。

【質疑応答】

◆辞任決断は月曜

 記者(幹事社・日本テレビ) 治療を続けて執務に当たる選択肢はなかったのか。辞任を決意したのはいつか。
 首相 9月に人事があり、(臨時)国会を開会する中で、(病状が)良くなっていく保証はない。コロナ禍で政治的空白を生み出さないように辞任するしかないと決断した。今週月曜、診断を受けた際に判断した。次の(自民党)総裁の任期などを考えると、影響を与えないのはこのタイミングしかない。
 記者(幹事社・読売新聞) 政権のレガシー(政治的遺産)は。
 首相 レガシーは国民、歴史が判断する。政権が発足した際は東北の復興に取り組んだ。経済では、20年続いたデフレに「3本の矢」で挑み、400万人を超える雇用をつくり出した。成長の果実を生かし、幼児教育・保育の無償化等を行った。
 記者(朝日新聞) 次期政権に望むことは。後継候補と言われる岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長、菅義偉官房長官の評価は。
 首相 辞めていく私が注文すべきではないが、まずはコロナ対策に全力を尽くすことだ。(後継に)名前が出ている方々はそれぞれ有望だ。政策を競い合う中で決まっていくのだろうと期待している。
 記者(共同通信) 解決できなかった外交問題で反省すべき点は。
 首相 拉致問題はあらゆる可能性、さまざまなアプローチで全力を尽くしてきた。国際的に認識されるようになった。結果は出ていないが最善の努力をした。

◆政権の問題「答弁済み」

 記者(東京新聞) 歴代最長政権となり、官僚の忖度そんたくや公文書の廃棄・改ざんなど負の側面も問われた。国民に疑問を持たれた問題に十分な説明責任を果たせたか。
 首相 公文書管理はルールを徹底していくことにしている。国会では相当長時間にわたり、問題について答弁した。十分かどうかは国民が判断すると思う。
 記者(日本経済新聞) 後任の総裁選びにはどう臨むか。
 首相 影響力を行使しようとは全く考えていないし、そうすべきでもない。
 記者(テレビ朝日) 次期衆院選での身の振り方は。
 首相 一議員として仕事をしていきたい。
 記者(産経新聞)首相、総裁に必要な資質は。
 首相 しっかりとしたビジョン、責任感と情熱を持った方だろう。今まで名前が出た方はそうした資質を持っている。

◆布マスク、批判あった

 記者(TBS) コロナ対応では布マスクがなかなか行き渡らなかった。反省点は。
 首相 マスクには厳しい批判があった。受け止めなければならない。経済への影響は種々の対策で、他の先進国と比べれば抑えることができていると思うが、不十分な点もある。
 記者(フジテレビ) 辞任の決断の前に休めばよかったと後悔はあるか。
 首相 健康管理も首相としての責任。それが十分にできなかった反省はある。

◆改憲機運、盛り上がらなかった

 記者(北海道新聞) 改憲の機運が高まらなかった理由は。
 首相 国民的な世論が十分に盛り上がらなかったのは事実で、それなしに進めることはできないと痛感している。国会議員も議論しなければ国民的な議論は広がらない。その責を果たすように、一議員としてこれから頑張りたい。
 記者(時事通信) 第1次政権とは違う身の引き方ができたか。
 首相 任期途中の辞任なので批判があるのは当然で、甘んじて受けなければならない。もう少しできないかという葛藤がなかったわけではない。
 記者(京都新聞) 地方創生についての評価は。
 首相 パラダイムシフトが起こるというところまではきていない。東京への(一極)集中には歯止めがかかっていないが、スピードは相当鈍らせることができた。
 記者(中国新聞) 平和、核廃絶にどう向き合ってきたか。
 首相 核兵器廃絶は私の信念であり、日本の揺るぎない方針だ。日本の近くで核開発を進める国から日本を守り抜かなければならない。日米同盟の絆を強くすることで日本を攻撃しようという気持ちに相手をさせないことにつながる。抑止力は戦争を防ぐためのものだ。
 記者(毎日新聞) 辞任の決断を誰かに相談したか。
 首相 1人で判断した。
 記者(フリーの江川紹子氏) コロナ禍で日本がIT後進国だと露呈した。
 首相 IT分野における問題点、課題が明らかになった。反省点だ。
 記者(ロイター通信) 後任の総裁が決まるまでの時間は。
 首相 党の執行部が具体的に考えている。
 記者(ビデオニュース・ドットコムの神保哲生氏) 会見で質問と答えが目の前にあるという状況に違和感はなかったか。
 首相 首相の発言は正確性が必要であり、正確な答弁をしなくてはならない。

◆政権の私物化ない

 記者(西日本新聞) 森友、加計問題など政権の私物化という批判がある。
 首相 政権の私物化はあってはならないこと。反省すべき点はあるかもしれないし、誤解を受けたなら反省しなければいけないが、私物化したことはない。
 記者(報知新聞) 来夏の五輪開催への影響は。
 首相 スケジュールに沿ってしっかりと準備を進めて開催国の責任を果たしていかなければならない。

【記者会見の流れ】 首相の冒頭発言後、内閣記者会の幹事2社(各社の持ち回り制)が順に代表質問した。その後、司会の長谷川栄一内閣広報官が挙手した記者の中から指名。幹事社を含め20人が質問し、61分で終了した。

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