「求心力」失い東京五輪開催見通せず…安倍首相辞任表明、スポーツ界にも衝撃

2020年8月29日 05時55分
マリオに扮し、赤いボールを手に五輪閉会式に登場した安倍首相=2016年8月、リオデジャネイロで(ロイター・共同)

マリオに扮し、赤いボールを手に五輪閉会式に登場した安倍首相=2016年8月、リオデジャネイロで(ロイター・共同)

  • マリオに扮し、赤いボールを手に五輪閉会式に登場した安倍首相=2016年8月、リオデジャネイロで(ロイター・共同)
 安倍晋三首相が28日、辞任する意向を表明した。延期された東京五輪・パラリンピックで大会招致の段階から旗振り役だった国のトップが、開幕まで1年を切った時期に交代する。新型コロナウイルスの感染拡大で、今なお大会の開催が危ぶまれている中、「求心力」となっていた首相が表舞台から姿を消す事態。スポーツ関係者にも衝撃は広がり、五輪・パラリンピック開催への不透明感は増すばかりだ。 (森合正範、磯部旭弘)

◆招致段階から常に主導

 安倍首相は28日の会見で、来夏の大会までのロードマップ(行程表)がすでに示されていることに触れ、「次のリーダーもその考え方のもとに(開催を)目指していくであろうと思う。もちろんそのために、さまざまやらなければいけないことがあると思っている」と述べた。ただ首相がこれまで果たしてきた役割の大きさを考えると、後任にのしかかる責務は大きそうだ。
 招致委員会と日本オリンピック委員会(JOC)で要職を歴任した市原則之氏は安倍首相について、「リーダーシップがあった。自ら率先して動き、森(喜朗)さんとオールジャパン体制を築き上げた」と功績を挙げる。肥大化したスポーツの祭典の招致と大会準備の現状は、開催都市の枠を超えるといっても過言ではない。国のトップが率先して動いたことは大きかった。
 2013年の国際オリンピック委員会(IOC)総会。招致演説に臨んだ安倍首相は福島第一原発事故について「状況はコントロールされている」と言明した。海への汚染水の流出が続いていた中での発言で非難の声も上がったが、市原氏は国の強力なバックアップの表れとして「IOCに対して大きな安心感を与えたと思う」と振り返る。
 新型コロナウイルスの感染が拡大した今年3月にはIOCのバッハ会長と電話で協議し、大会の1年延期で合意した。「成功へ向けて安倍首相にIOCの完全な支援を伝えた」と話したバッハ会長。IOC会長職への選出は、くしくも東京五輪の招致が決まった13年の同じ総会。互いに信頼は厚く、二人三脚で歩んできた。

◆延期決めた本人が不在に

 一方でスポーツ界からは「安倍首相が関わり、五輪そのものが変わった。政治色が強まった」と五輪の変貌を指摘する声も大きい。長らく五輪に携わってきたJOCの元理事は「五輪は開催都市が主導するもの。それをNOC(国内オリンピック委員会)が支える。だが、東京五輪は節目節目で安倍首相という一国の長(おさ)が前面に出てくる。異例のこと」と語った。
 16年リオデジャネイロ五輪の閉会式。安倍首相は人気ゲームのキャラクター「マリオ」に扮(ふん)して登場した。元理事は「明らかなスポーツの政治利用。そこまで出たがりなのかと驚いた」と冷めた口調で振り返る。
 バッハ会長との電話会談で決まった大会の延期も、開催都市やJOCを置き去りにし、首相が主導したのが実態だった。JOCの幹部は「何としても(来年9月までの)任期中に五輪をやりたかったのだろう。話し合いや相談をされることなく決まっていた」と複雑な表情だった。

◆招致の中心人物3人、開催前に全員退く

 五輪・パラリンピックの開催が決まった時点の都知事だった猪瀬直樹氏、JOCのトップだった竹田恒和氏、そして、安倍首相。招致を導いた中心人物が全員、開幕を前に任を外れた。JOCの同幹部は「1年延期は安倍首相が交わした約束。ここで辞めるとは…。いざという時に誰が決断し、誰が責任を取るのか」と話していた。
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東京五輪・パラリンピック招致に関わった主な3人(肩書は当時)
猪瀬直樹都知事 2013年12月19日、医療法人グループからの5000万円受領問題で辞職を表明
竹田恒和・日本オリン
ピック委員会会長
 2019年3月19日、東京五輪・パラリンピック招致を巡る贈収賄疑惑がある中、
 任期満了(同年6月)での退任を表明
安倍晋三首相 2020年8月28日、体調悪化で職務の継続が困難として辞任する意向を表明

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