「1億総活躍」「出生率」「地方創生」 数値目標掲げるも看板倒れ次々

2020年8月28日 22時50分
 辞任を表明した安倍晋三首相が7年8カ月にわたる長期の政権運営で、一貫してこだわったのが経済政策「アベノミクス」の推進だ。経済成長やデフレ脱却の実現に意欲を示し、実績として株価の回復や雇用環境の改善などを強調してきた。「1億総活躍」「地方創生」などのスローガンを次々と掲げたのも特徴。だが、数値目標を打ち上げながら「看板倒れ」に終わったことを示すデータも少なくない。(石川智規、大島宏一郎、山口哲人、川田篤志)

安倍政権の看板政策 目標と現状

◆将来世代へのツケ


「名目GDP(国内総生産)600兆円を達成する」。安倍首相は2015年9月以降、こう繰り返した。
 念頭にあったのは、富裕層が富めば、庶民も恩恵を受けて豊かになる「トリクルダウン理論」。アベノミクス「三本の矢」の一つである大規模な金融緩和で円安ドル高を誘導し、まず輸出企業の業績を回復させた。さらに「成長と分配の好循環を作り出す」として、財政出動による景気刺激策を組み合わせて株価上昇を促した。
 だが、16年以降の名目GDPは500兆円台にとどまる。企業の利益は十分に家計に届かず、多くの国民には富の実感は乏しいまま。財政赤字は膨らみ、将来世代にツケを回す結果に陥っている。
 デフレ脱却の旗印としては、日銀に「物価上昇率2%の達成」を求めたが、消費者物価指数は遠く及ばず。インバウンド(訪日観光客)の増加で地方経済を潤そうとしたが、コロナ禍にも見舞われて「4000万人」の目標には届いていない。
 この間、国際通貨基金(IMF)がまとめた「1人当たり名目GDP」世界ランキングは、12年の15位から18年は26位に下がった。
 GDP600兆円と同時に、子どもが欲しい人の希望がかなった場合の「希望出生率」1・8の実現も打ち出した。子育て支援策として幼児教育・保育の無償化、企業主導型保育所の設置などに取り組んだが、女性が生涯で産む子どもの平均数「合計特殊出生率」は19年が1・36。12年の1・41より下がり、少子化に歯止めがかかっていない。

◆進まない地方創生


 首相は内閣改造のたびに「1億総活躍」「まち・ひと・しごと創生」など新たな看板を掲げ、特命の担当閣僚を指名する手法も好んだ。
 都市部から地方への移住や企業移転を呼び掛けた「地方創生」は進んでいない。政府は地方に移転する企業への優遇税制を創設したが、総務省の統計では、19年の東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)への人口移動は、転入者が転出者を24年連続で上回り、148783人増加。コロナ禍で東京圏への流入は鈍っているが、安倍政権下でも一極集中が進んだ。
 首相は28日の記者会見で、地方創生の評価を問われ「東京集中に歯止めはかかっていないが、スピードは鈍らせることができた」と強調した。7年8カ月に及んだ政権運営全般については「残された課題も残念ながら多々ある」と認める場面もあった。

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