無料低額宿泊所の滞在15年超も 多摩地域30市町村、長期化が常態化

2020年8月30日 05時50分
 生活困窮者らが一時入居する無料低額宿泊所(無低)に関し、長期間の滞在が常態化していることが、東京都多摩地域の地方議員グループが30市町村に行ったアンケート結果で分かった。平均滞在期間を具体的に回答した自治体で軒並み年単位に及んだ。生活困窮者の自立支援を目的とした仕組みの形骸化が裏付けられた形だ。(竹谷直子)
 アンケートは超党派の議員でつくる「市民自治をめざす三多摩議員ネットワーク」が実施。生活困窮者支援の改善に向け、東京23区、神奈川、千葉両県でも同様の調査をしている。
 今回の調査結果によると、無低の入居期間平均が1年を超えた自治体は10市あった。短いケースで小平市の1年弱、最長は武蔵村山市の5~6年だった。アンケートとは別に立川市が市議に提供した資料では、1年以上の入所者が3月末時点で全体の約7割を占め、15年以上の人もいた。
 無低は1990年代から生活保護を受ける人を住まわせる形態で急増。開設する事業者によっては、劣悪な住環境で生活保護費を搾取する「貧困ビジネス」をするケースもある。入居期間が長期化すれば、こうした貧困ビジネスによる搾取被害が続く可能性もある。
 また、アンケート結果では、入所者全員を個室利用にしている自治体は2市のみ。東京都条例規則は2023年までに既存の施設を個室利用できるよう改修を求めているが、入所者のプライバシー確保の面でも課題が浮かんだ。
 生活困窮者を支援する一般社団法人「つくろい東京ファンド」の稲葉剛代表理事は「福祉事務所が住居のない生活保護受給者を無低に流し込む方式が固定化している」と説明。長期化の原因として、生活保護を担う自治体のケースワーカーの不足を挙げ「施設に入れてしまえば施設が管理してくれるので楽だとなっているのでは」と指摘した。
 立川市の生活保護受給者男性(67)は、かつて入居した無低について「高齢者が多く、長くいる人もいたみたいだ」と明かす。6畳2間に4人で暮らし、カーテンで区切られただけの3畳分の家賃は3万9000円。生活保護費から朝晩の食費や管理費が引かれ、手元に残ったのは1万8000円。自立資金はためられなかった。「昼食代でほとんどなくなり、みんなお金に困っていた」と話す。

無料低額宿泊所での生活を「厳しかった」と振り返る男性=27日、東京都立川市で

 稲葉さんは「自治体は、金銭管理ができないなど、1人での生活が難しいことを施設に入れる理由にするが、恣意的に運用されている側面がある。プライバシーが保たれた場所に住むのは基本的な人権だ」と話した。

 無料低額宿泊所 社会福祉法に基づき、ホームレスら生活困窮者の自立を促す目的で、無料、低額で提供される簡易住宅や宿泊施設。事業者は民間やNPOが多く、都道府県知事に開設を届け出る。厚生労働省は「一時的な居住の場」と位置付け、東京都条例も契約期間を1年までと定めている。


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