後継首相選び 包摂と説得の指導者を

2020年8月30日 07時11分
 安倍晋三首相(自民党総裁)の後継にどんな人物を選ぶべきか。安倍政権下で強まった社会分断の傷を癒やし、コロナ禍に立ち向かうため、「包摂」と「説得」を重んじる指導者の登場を望みたい。
 後継を選ぶ自民党総裁選は来月十五日を軸に行われ、党員投票は行わず、党所属国会議員三百九十四人と都道府県連代表各三人の投票で選出する方向だという。岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長、菅義偉官房長官らの名が候補に挙がる。
 自民党総裁選は一政党の代表選びだが、同党が国会で多数を占める状況では、首相選びと同義語である。党員以外の国民も無関心ではあり得ない。
 そこで、あえて注文したい。次期総裁には「安倍政治」が欠いた「包摂」と「説得」を重んじる指導者を選んでほしいのだ。
 包摂とは字義通り「包み込む」こと。政治「改革」で衆院への小選挙区制導入以降、「敵」か「味方」かに分け、過剰に攻撃する風景は国会内だけでなく社会全体に広がる。安倍首相の政権復帰後は政権に異を唱える「敵」を徹底攻撃し、排除する風潮も強まる。
 逆に、自らを支持する「味方」の重用は「忖度(そんたく)」と「私物化」の政治を生んだ。森友、加計両学園や「桜を見る会」の問題は、いずれも首相の「味方」を優遇したか否かを巡る疑念である。
 また「説得」を尽くす政治文化も安倍政権下では失われた。選挙で国民の支持を得た多数党の主張のみが正しく、反対意見を聞き入れず、説得しようとすらしない、荒涼とした政治風景が広がる。
 野党が要求する国会召集や審議への出席を拒み続け、政権末期には、体調が万全でなかったとはいえ、記者会見も開かなかった。
 しかし「包摂」や「説得」を欠く強権的手法は新型コロナウイルスで「新しい生活様式」を強いられる社会には通用しないだろう。
 感染拡大防止のため、行政機関が国民に一時的に規制や負担を強いることがある。その際、国民が納得して不便を受け入れ、効果を上げるには、政治指導者が説明を尽くすことが欠かせない。
 ドイツのメルケル首相は今年三月、外出制限措置などの際、決定透明化と説明で理解を得て、人々が力を合わせる必要性を訴えた。それが民主主義だ、とも。
 未知のウイルスに立ち向かうには「敵」「味方」なく幅広い国民に納得してもらう必要がある。そんな努力をいとわない指導者こそ「コロナの時代」にふさわしい。

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