20時間車移動の帰国者も コロナ水際対策の改善求め邦人署名募る

2020年8月31日 10時50分

国の水際対策の改善を呼び掛けるオンライン署名のサイト

◆「水際対策で帰国できない」

 6月に米ワシントンから帰国した記者が、空港内でのPCR検査や2週間の自主隔離生活をつづった記事を7月に東京新聞ウェブに掲載したところ、記事を読んだニューヨーク在住の女性から「厚生労働省の水際対策がネックで帰国できない」と嘆くメールが届いた。帰国者の中には、公共交通機関を使えないため空港から車で20時間かけて実家に戻った人もいた。女性は厚労省に対し、帰国者の隔離先や代替の交通手段を確保するよう求める電子署名への賛同を呼び掛けている。(畑間香織)
 国は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、帰国者にPCR検査の実施と、14日間の自主隔離、電車やタクシーといった公共交通機関を使わないよう求めている。

◆費用は帰国者が全額負担

 メールをくれたニューヨーク在住のシェンケンフェルダー・ヨシコさん(41)は「金のない人は帰れない」と話す。シェンケンフェルダーさんは、ニューヨークが都市封鎖となった3月、米系ツアー会社を解雇された。帰国を考えたが、帰国者自身が自主隔離場所を探し、費用を全額負担、空港からの移動手段も確保しなければならないことを知り、断念した。
 その後米政府から1200ドル(約13万円)の現金給付と、失業保険が入ってきたため、再び帰国を考え始めた。「困っている人はもっといるはず」と話す。
 帰国した場合の隔離先は、高齢の両親がいる実家ではなく、ホテルなどで過ごすつもりだ。帰国者をバッシングする風潮が心配で、実家は「関西地方」としか明かさない。
 5月に立ち上げた署名サイトには、140筆余りと多くはないものの、「小さな子供を抱えてこのような対応では困る」「帰らざるを得ない人もいるのにひどい」という声が寄せられている。

◆厚労省「国が負担する法令がない」

 厚労省の福井竜二・検疫所業務管理室長補佐は「国が費用を負担する法令の根拠がないため、(水際対策は)要請としている」と説明。帰国者から不満の声が上がっていることについては「外務省を通じてコロナ対応について周知しているので、費用を用意するなど確認して帰国していただきたい」と話す。
 シェンケンフェルダーさんは「帰国者の状況をわかってほしい。帰国者が安心して暮らせるように国が隔離施設の手配や、空港からの交通手段を確保してほしい」と訴える。署名は一定数が集まり次第、厚労省に提出する。

◆コロナ禍に帰国した学生2人

オンラインで取材に応じた鈴木里歩さん(左)と高松秀徒さん

 留学先から帰国した学生の中には、政府の水際対策の要請を守った結果、20時間かけて車で空港から実家に戻ったり、2週間の自主隔離先のホテルを見つけられなかったりした。

◆福岡→成田 車で20時間

 ポーランドのワルシャワ大に交換留学していた神戸大4年の高松秀徒さん(23)は、滞在を続けた場合に奨学金が支給されなくなる可能性などから、予定を3カ月前倒しして、チャーター便で帰国した。
 要請では、公共交通機関の利用を控えなくてはいけない。高松さんは幸い、同じ便に乗った知り合いで同郷の学生の父親が、1000キロ以上離れた福岡市から車で片道20時間かけて成田空港まで迎えに来てくれたため、帰ることができた。高松さんは「経済的余裕のない学生は、空港近くに住んでいなければ要請を守るのは無理。友達のお父さんに感染させていたらと思い、不安だった」と話す。
 帰国後の滞在先や移動手段の確保が最大の悩みだったのは、留学先の英国から4月に帰国した国際教養大4年の鈴木里歩さん(21)。鈴木さんは秋田県大仙市の実家に帰る手段がなく、羽田空港から徒歩圏内のホテルを帰国前に予約しようとしたが、帰国者と告げると宿泊を断られた。
 鈴木さんはフェイスブックのグループ「緊急帰国者支援プラットフォーム」に登録し、宿泊先の紹介や送迎を引き受ける人と、帰国者をつなぐウェブ上のサービスを活用。何とか都内のマンションの1室を14日間借りられ、空港から車で送迎してくれる人を見つけられた。

◆「帰国後の流れをもっと伝えて」

 高松さんと鈴木さんは帰国後の自主隔離施設の滞在費や、移動手段を国が負担することを求める。その上で鈴木さんは「日々状況が変わり、検疫が強化されるなか、外務省のホームページの更新が追いついていなかったように感じた。政府には、帰国後の流れの情報をもっと伝えてほしかった」と話す。
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