株価重視、生活上向かず 実質賃金低下、年収200万円以下増<安倍政権 緊急検証連載>

2020年8月31日 05時55分
<一強の果てに 安倍政権の7年8カ月(2)>

◆「金持ちにはもうけさせたのに…」

 「この7年余りで給料は徐々に下がった。新型コロナウイルスで、この先どうなるかも分からない」
 在任7年8カ月の安倍晋三首相が辞任を表明した翌日の29日。東京都内に住むビル清掃員の男性(67)は、不安げな表情で都庁前に集まった160人の列に並び、ご飯やミニトマトなどの食料品を受け取った。

食料配布会で食料を受け取る男性(右)。8月に入っても支援を求める人が多く集まる=新宿区で

 貧困問題に取り組む認定NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」(東京)などによる週2回の食料配布。コロナ禍の生活苦もあって支援を求める人が増え、29日に列に加わった人の数は例年の2.5倍に達した。
 安倍政権の7年8カ月で年収1000万円を超える層が増えた一方、200万円以下の「ワーキングプア(働く貧困層)」も増加。格差の拡大が指摘されてきた。食料配布の列に並んだ年金暮らしの無職男性(72)は「金持ちにはもうけさせたのに、貧乏人には何もしてくれない」と憤った。

◆消費税率引き上げで支出増

 「アベノミクス」の目玉政策として日銀は2013年に大規模な金融緩和を開始。大量に国債を買い入れ、市場にお金を流しこんできた。結果的に円の価値が下がり、為替相場は円安に。輸出で稼ぐ大企業の業績は回復したが、恩恵を受けた人は多くはなかった。

 企業はたまった利益を「内部留保」に回し、賃金は大きくは上がらなかったためだ。失業率など雇用環境は改善したが、企業は人件費を抑えようと低賃金の非正規雇用を増やした。
 こうした中で安倍政権は14年4月と19年10月に消費税率を引き上げた。給料は上がらないのに支出は増加。物価の伸びを超えて賃金が上がったかを示す「実質賃金指数」は低下を続け、家計に占める食費の割合を示し、高いほど生活が苦しいとされる「エンゲル係数」は上昇した。   

◆株高演出でも「買うお金なんてない」

 円安による大企業の業績回復は株高を演出。その後も安倍政権は株価を重視した。市場関係者の間では、支持率を維持するためとの見方がもっぱらだった。
 株高は金融資産が多い富裕層ほど受ける恩恵が大きく、格差の拡大を助長した。都内の不動産関連会社で働く40歳代の女性は「アベノミクスはお金を持っている人に有利な政策なので、私たちのような業界にはありがたかった」。逆に、さいたま市の男性会社員(37)は「株を買うお金なんてない。自分とは関係ない人たちがもうけたようで悔しい」と話した。 (吉田通夫、原田晋也)

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