コロナ疲れをセルフケア おまじないで不安解消/家で実践、心の回復法

2020年8月31日 07時28分

絵本『つるかめ つるかめ』より

 コロナ禍でストレスや不安を抱える日々が終わらない。治療薬の開発はいつになるのか、自粛生活はいつまで続くのか−。そんなつらさに効くのが「セルフケア」だ。意味は「自分で自分を上手に助けること」。さまざまな手法があり、心理学の実証研究で効果が広く認められている。出版界でもセルフケアの絵本やワークブックが刊行され、反響を呼んでいる。 (出田阿生)
 児童虐待がテーマの『きみはいい子』などの作品で知られる作家中脇初枝さんは、「コロナ禍で在宅を余儀なくされることでDVや児童虐待が悪化する」と居ても立ってもいられなくなった。不安やつらさに寄り添いたいと、絵本『つるかめ つるかめ』(あすなろ書房、一三二〇円)を、着想から二カ月の今月、緊急出版した。

絵本『つるかめ つるかめ』より

絵本『つるかめ つるかめ』より

 絵本では、各地で伝承されるおまじないを紹介する。災いから逃れたいという切実な願いがこもるおまじないは、セルフケアの元祖。あるとき中脇さんが外出中、突然の雷雨に驚いた小学一年の男の子がガバッと地面に伏せて動けなくなった。中脇さんはとっさに「くわばら、くわばらと唱えれば大丈夫」と教えた。するとその子は立ち上がり、おまじないを叫びながら駅に走って行けたという。
 「現実は変えられなくても、前向きになれる。こんなにも言葉に力があるんだと驚いた。絵本は不安を抱えている子どもだけでなく、平気な顔で無理しているけれど、本当はとても不安な大人にも届けたいです」

絵本『つるかめ つるかめ』より

 絵は、中脇さんの呼びかけに共感した米アラスカ在住の画家あずみ虫さんが担当した。雷や地震、大風は人間にとっては災害。でも「自然への畏怖を表現したい」とアラスカの雄大な森や草原、海の絵にした。金属板を切って色付けする独自の手法を使い、大胆なフォルムで描いた絵は美しく、子どもの繊細な感情を表現する。転んだとき、病気、嫌なことがあったとき…。おまじないを唱えた子どもが「何があっても大丈夫」と自分に言い聞かせて乗り越える姿に、力が湧く。

患者用の犬のぬいぐるみを持つ伊藤絵美さん。抱き締めると、自分自身が抱かれる感覚になり、リラックス効果があるという

 一方、七月に出版され、わずか二週間で三刷一万部のヒットとなったのが『セルフケアの道具箱 ストレスと上手につきあう100のワーク』(晶文社、一七六〇円)。都内で開業するカウンセラーの伊藤絵美さんが、心の不調から回復するのに役立つ実践の数々をまとめた。
 クリニックに行けなくても、自分で自分の心をケアする方法が紹介されている。昨年、家族の入院や介護で伊藤さん自身も体調を崩し、「自分を回復させる」気持ちで執筆したという。
 内容は認知行動療法やスキーマ療法といった専門理論に基づくが、難しい用語は一切出てこない。紹介されている手法は「何かをギューッと抱き締める」「大げさに息を吐きまくる」など、どれもすぐできるものばかりだ。例えば、感染への心配、不安や恐怖があれば、それを紙に具体的に書き出してみる。「まずは自分のつらさに気付くこと。このくらい平気だと抑え込むとむしろ悪化します」
 文字を読むエネルギーがなくても絵だけで理解できるよう、コミックエッセー『ツレがうつになりまして。』の著者細川貂々(てんてん)さんのほんわかしたイラストを多用した。「プロのカウンセリングを受けるのと、この本に書いたやり方で家で地道にセルフケアに取り組むのは同じ効果がある。家族や友達とやるのもいい。コロナをきっかけに、道具を選ぶように自分に合う方法を選んで続けてほしい」

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