省エネ推進「グリーン・リカバリー」が景気と温暖化対策の切り札

2020年9月1日 06時00分

<地球異変・「コロナ後」と温暖化(番外編)>

インタビューに応じる明日香寿川・東北大教授

明日香寿川・東北大教授に聞く

 新型コロナウイルス禍では経済活動や移動が制限され、世界的に景気が落ち込んだ。今後の景気対策では、地球温暖化対策と組み合わせた「グリーン・リカバリー(緑の回復)」が注目されている。新しい潮流に日本は乗ることができるのか。環境エネルギー政策に詳しい明日香寿川じゅせん・東北大教授は「省エネの推進が鍵を握る」と指摘する。(聞き手・小川慎一)
 ーグリーン・リカバリーとは何か。
 この数年、欧米で議論されてきた「グリーン・ニューディール」の考え方が基底にある。再生可能エネルギーや省エネへの投資を拡大させて、経済成長しながら、石炭などの化石燃料に依存する社会・経済システムを変え、貧困や格差の解消にもつなげようとする考え方だ。
 ーなぜ景気対策として注目されているのか。
 経済活動の制限で、温暖化につながる二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出は、世界で前年より8%減る見込みだ。2008年のリーマン・ショック後も排出量は減ったものの、各国の化石燃料重視の景気対策で増加に転じた。温暖化問題が深刻で、再生可能エネルギーも安価になった今、海外では政府や企業が真剣に「環境も経済も」に方針転換している。日本は完全に出遅れている。
 ー柱となる再生エネ拡大に必要なことは何か。
 日本の再生エネは安くはなっているが、他国と比べるとまだ高い。最大の理由は、原発や化石燃料を重視する国のエネルギー基本計画にある。これを変えないと何も変わらない。国の方向性が明確になれば、企業はそこに投資する。経済産業省は7月、非効率な石炭火力発電所の段階的な休廃止方針を打ち出した。しかし、これはみせかけだ。逆に、石炭火力や原子力発電所を、国民の電気代を原資とした「補助金」で温存する仕組みも始まる。
 ー他に必要な政策は。
 省エネの推進が鍵。グリーン・リカバリーを進める国は、どこもこの分野への予算配分の比重が大きい。「日本は省エネ先進国」といわれるが、神話だ。1970年代の石油ショック後は省エネが進んだものの、90年以降は停滞している。新築住宅の断熱基準を厳しくしたり、改修で断熱性を向上させたりし、工場での配管の断熱性を高めたりすることは、短期間で実施可能で、経済的にももうかる話。政府は、補助金の付与などで支援するべきだ。

  あすか・じゅせん 1959年生まれ。シンクタンク研究員などを経て、東北大東北アジア研究センター兼環境科学研究科教授。2019年夏、エネルギーや温暖化問題の研究者や政治家らと、脱原発と脱温暖化を軸に経済再生を目指す提言「原発ゼロ・エネルギー転換戦略」を発表。

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