出火原因「たばこ」が最多に 昨年の東京都内

2020年8月31日 21時44分
 東京消防庁管内(稲城市と島しょ部を除く)で起きた火災の出火原因で昨年、「たばこ」が1976(昭和51)年以来、43年ぶりに「放火」を抜いて最多となったことが同庁への取材で分かった。たばこの不始末による火災の死者は35人に上り、過去10年で最も多かった。同庁は「人命を奪う最も身近な火元。しっかり後始末してほしい」と注意を呼び掛けている。(奥村圭吾)

◆「放火」抜いて43年ぶり

 同庁によると、昨年の火災4089件の原因別で、たばこは690件(16.8%)で最も多かった。2位は放火・放火疑いの639件(15.6%)で、3位はガステーブルの347件(8.4%)。
 たばこの出火原因は、統計が残る48年の89件から右肩上がりで増え、73年の2043件をピークに減少に転じた。最近の10年は700件前後で推移している。
 一方、放火は77年(1544件)に、たばこを抜いて最多となり、99年の2731件でピークに。2005年時点でも2200件以上だったが、この約15年で3分の1以下まで減少した。
 今年もたばこが原因の火災は相次いでいる。江戸川区のアパートで6月18日に住人の男性(59)が死亡した火災では、ベッドの近くからたばこの吸い殻と灰皿が見つかった。

たばこが原因とみられる火災で59歳の男性が死亡したアパート=東京都江戸川区で


◆防犯カメラ増加で放火が激減

 たばこが再び最多となった背景について、火災に詳しい東京理科大研究推進機構総合研究院の関沢愛教授は「街頭の防犯カメラが急増している影響で町の死角が消え、放火犯が犯行しづらくなり、放火がたばこを上回るペースで急激に減少している」と分析。たばこも喫煙率の低下や電子たばこの普及で微減を続けてきた点に触れ、「喫煙者の中には吸い殻の始末が雑な人が一定数いるため、さらなる減少の壁になっている」と課題を語った。

◆死者の半数が「寝たばこ」

 東京消防庁によると、昨年、たばこの不始末による火災で死亡した35人の半数近くが「寝たばこ」が原因だった。寝たばこは、布団などが炎を上げずにくすぶり、室内に一酸化炭素(CO)が充満する「無炎燃焼」を招きやすい。専門家は「気付いた時には体が動かず、逃げ遅れかねない」と注意を呼び掛ける。

東京消防庁が寝たばこを再現した実験。たばこの火を置いて約30分で、CO濃度が運動能力を失う数値に達した=東京消防庁提供

 昨年のたばこの不始末による火災の死者数35人は、住宅火災の死者全体の4割強を占める。寝たばことみられるのは16人(前年比9人増)で、うち7人がCO中毒で亡くなった。
 同庁が8畳の室内で行った寝たばこの再現実験では、点火したたばこを掛け布団と敷布団にはさんだところ、30分で寝ている人の口元のCO濃度が運動能力を失う数値に達した。
 関沢教授は「炎が上がる完全燃焼と比べてCOが多く発生する。COは空気と比重がほぼ同じで、部屋の上部に逃げずに徐々に広がる」と指摘。「意識があっても足腰が動かずに、火災に巻き込まれる危険性がある」と話す。

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