コロナ下でも改憲に執念 「立憲主義に逆行」支持得られず<安倍政権 緊急検証連載>

2020年9月1日 05時55分
<一強の果てに 安倍政権の7年8カ月(3)>

集会でプラカードを掲げ、安倍首相が目指す改憲への反対を訴える参加者=2019年5月3日、東京都江東区の東京臨海広域防災公園で(岩本旭人撮影)

 「任期中の憲法改正が安倍晋三総裁を支える全議員の思いだ。そのツール(道具)として、感染症を入れるよう提案したい」
 安倍首相側近で自民党の下村博文選対委員長は8月27日、党の議員連盟で、党改憲案にある「緊急事態条項」を感染症にも適用するよう提案。新型コロナウイルス対応を理由に、首相在任中の改憲を目指したが、翌28日、首相が退陣を表明した。首相自身も自衛隊がコロナ対応に当たっていることを挙げ、9条改憲を訴えたことがある。

◆改憲ルール変更、9条に自衛隊明記…あらゆる手段講じ


 首相は2012年の政権復帰後、あらゆる手段で改憲を目指してきた。
 まずは改憲手続きを定める96条の改憲を主張。国会発議の要件を3分の2から過半数に緩める内容だったが、改憲ルールを変えるやり方は「裏口入学」との批判を浴び、棚上げした。
 17年には、9条に自衛隊を明記した新憲法の20年施行を目指すと表明。これを受け、自民党は18年、自衛隊明記や緊急事態条項創設など4項目の条文案をまとめた。
 こうした動きは「立憲主義に逆行する」との批判にさらされ続けた。立憲主義とは、国家権力の暴走を憲法によって縛るという現行憲法の根幹をなす考えだ。
 96条の改憲を目指したのが代表例。14年には、歴代政権が違憲としてきた集団的自衛権の行使を、政府による憲法解釈変更だけで容認した。
 そもそも首相は99条に基づく憲法尊重擁護義務を負う立場なのに、改憲を主導すること自体、立憲主義に反すると言われてきた。

◆安保法成立強行後、世論調査に変化


 集団的自衛権行使を可能とする安全保障関連法については、衆院憲法審査会で与野党が参考人に招いた憲法学者3人全員から「9条違反」と疑義を示されたにもかかわらず、成立を強行。野党が求める憲法53条に基づく臨時国会の召集も避けてきた。
 そんな首相の姿勢が警戒心を高め、世論を改憲へと向かわせなかったのは間違いない。
 憲法記念日前に毎年行われる共同通信の世論調査によると、改憲への賛否を尋ねた15年調査では、賛成が反対をわずかに上回ったが、安倍首相の下での改憲を問う質問となった16年以降は賛否が逆転した。
 首相は退陣表明の際、改憲について「国民的な世論が十分に盛り上がらなかった」と認めながらも、次の首相に改憲への取り組みを期待した。だが、主権者である国民が改憲を求めているのか―。次の首相も改憲を目指すなら、この根本的な問いに向き合うところから始めなければならない。 (川田篤志)

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