自民総裁選「国民感情からかい離」 党員投票省略は政策見極める機会失う

2020年9月2日 05時55分
 自民党は1日の総務会で、安倍晋三首相(党総裁)の後任を決める総裁選で党員・党友投票を実施しないことを決めた。民意に近い党員の声が反映されない選出方法には、どんな問題や影響があるのか。愛知大の後房雄教授(政治学)に聞いた。(柚木まり)
 ―党員投票を経ずに次の政権トップが決まる。

後房雄・愛知大教授

 「緊急性を要するかどうかは政治的な判断ではあるが、党則に沿って総裁選が行われるため、ルール上の正当性はぎりぎり担保している。問題は、国民の期待をどれぐらいくみ取っているかだ。国民の感情から、あまりに懸け離れている。政権の信頼性、国民への説得力に傷が付いた」

 ―党内では中堅・若手の国会議員や地方組織が党員投票を求めた。
 「幅広い議員らが求めた。それでも、党中枢の総務会では党員投票の省略が多数派になった。世の中の考えとの乖離は大きく、高をくくっているということにしかならない。評価は後の総選挙で返ってくる」
 ―安倍首相は、新首相の任命まで職責を果たすと約束した。「緊急を要する」との執行部の判断は矛盾しているとの指摘もある。
 「首相はコロナ対策の今後の路線を示し、後任がきちんと選ばれるよう余力を残した形で辞任を表明した。前回のように投げ出すわけではない。首相が最もこだわったところではないか。にもかかわらず、正規の総裁選を行わないのは首相の辞め方と矛盾する」
 ―党員投票を見送ることの影響は。
 「一番の影響がコロナ対策だ。コロナはこれから中長期戦になる。現状を理解し、自分の言葉で国の戦略を語れる人がトップにならないと、国民はもたない。今回の総裁選は、党員1人1人が候補者の政策論争を見極めて投票する機会がないので、最低限の検証すら難しいだろう」
 「安倍政権は7年8カ月の長期に及んだ。この路線を継続するか、転換するかを本格的に判断する場をつくるべきだと考えるなら、党員の投票権は認めるべきだった。党内では現政権の主流派が明確にできており、極度に閉塞している」

「派閥の論理」数合わせ先行

 自民党総裁選では、1日に岸田文雄政調会長と石破茂元幹事長が立候補を表明。菅義偉すがよしひで官房長官は2日に出馬宣言をする予定で、予想される顔ぶれが出そろう見通しだ。だが、まだ政策論議が始まっていないにもかかわらず、党内各派は次々と支持の方向性を打ち出し「派閥の論理」による数合わせが先行している。
 最大派閥の細田派に加え、麻生派と二階派などが菅氏の出馬表明を待たずに支援する方針を固めた。これらの勢力と距離を置く議員からは「菅氏への雪崩が起きている」(閣僚経験者)、「勝ち馬に乗ろうとしている」(無派閥)との声が上がる。
 派閥の動きと連動するかのように、出馬の可能性が取りざたされていた麻生派の河野太郎防衛相は不出馬を表明した。総裁選は、党員投票を省略することが決まり、実施を強く訴えてきた中堅・若手や地方組織には失望が広がる。「総裁選のやり方を含め、国民に密室談合政治だと思われるのではないか」。岸田氏を推す議員は懸念を口にした。 (清水俊介)

関連キーワード

PR情報

政治の最新ニュース

記事一覧