小さな命を育む道 日本橋に母乳バンク 600人分供給

2020年9月2日 07時10分

低温殺菌機で母乳(サンプル品)を殺菌する様子などが公開された「日本橋 母乳バンク」

 早産の小さな赤ちゃん(体重1500グラム未満)に、寄付を受け安全に処理した母乳(ドナーミルク)を無償提供する「母乳バンク」が1日、中央区日本橋久松町の育児用品メーカー「ピジョン」本社にオープンした。全国2カ所目となる母乳バンクの認知度はまだ低く、関係者は「小さな命のために必要。道の始まりの日本橋から広がってほしい」と願う。 (増井のぞみ)
 母乳の提供は、医師の診察と血液検査を受けて異常がないことなどが条件で、母乳は冷凍し日本母乳バンク協会へ郵送する。これを協会が低温殺菌し、連携する病院の新生児集中治療室(NICU)へ送る。
 母乳には、腸管の粘膜を成長させるオリゴ糖や、病原体から体を守る免疫グロブリンなどが含まれる。小さく生まれた赤ちゃんは腸の発達が未熟で、母乳は負担が少なく腸を成熟させるという。ドナーミルクは、死亡リスクが高い壊死(えし)性腸炎にかかる率が人工乳の約三分の一との報告もある。
 しかし、お母さんが出産してすぐに母乳が十分に出るとは限らない。他のお母さんの母乳を低温殺菌せずに与える「もらい乳」は、感染管理上好ましくないと考える病院は増えている。同協会代表理事の水野克己・昭和大教授は「ドナーミルクは、母乳が出るまでのつなぎ。小さな命の栄養だけではなく病気を予防する薬になる」と意義を語る。
 オープンした母乳バンクは、ドナーミルクの安全を保つため、低温殺菌する機械や保管する冷凍庫などを備え、協会職員二人が常駐する。年間二千リットルの母乳を処理し約六百人の赤ちゃんに届ける。提供量は、二〇一四年に開設した一カ所目の昭和大江東豊洲病院(江東区豊洲)の約六倍だ。
 この日は、ピジョンの本社でセレモニーが行われ、北沢憲政社長が、一八年にブラジルの母乳バンクを見学したときのことに触れ「免疫の面で重要。どうして日本でできないのか」と、開設を決めた理由などを述べた。水野さんは「将来の日本を支えるのは明日生まれる子どもたち」と話し、NICUで亡くなった子のため搾乳を続けた女性から「自分の子どもの代わりに使って」と母乳を送られた例を紹介した。
 協会によると、日本では千五百グラム未満で生まれる赤ちゃんが年間約七千人いる。母乳を提供する女性は、同協会ホームページで応募を受け付けている。

オープニングセレモニーでテープカットに臨む(左から)ピジョンの北沢憲政社長、日本母乳バンク協会の水野克己代表理事、母乳バンク研究会会長の根本匠前厚労相=いずれも中央区のピジョン本社で

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