障害者の親亡き後 追う 「普通に死ぬ」 あいち国際女性映画祭で公開 

2020年9月2日 07時39分

向島育雄さん(左)は、撮影中に母親の宮子さん(右)をがんで亡くした。カメラは最後に会った2人の姿も収めていた=静岡県内で(マザーバード提供)

 重い障害のある人が「親亡き後」も地域で暮らし続けられるよう、家族や支援者らが奮闘するドキュメンタリー「普通に死ぬ〜いのちの自立〜」が完成した。利用できる福祉サービスや医療が限られる中、障害の有無にかかわらず、誰でも地域で「普通に生き、死ぬ」にはどうしたらよいかを問いかける。名古屋市で開かれる「あいち国際女性映画祭2020」で、6日に初公開される。 (細川暁子)
 特別支援学校卒業後の重症心身障害児が過ごす通所施設をつくった保護者らの奮闘を撮影し、二〇一一年に公開されたドキュメンタリー「普通に生きる」の続編。通所施設の利用者と家族が年を重ね、さまざまな困難に直面する中、地域で在宅生活を続ける道を支援者と模索する姿を追った。
 重い障害のある人が在宅で生活する場合、主に同居する家族が訪問介護や通所施設、施設の短期入所などの福祉サービスを利用しながら介護している。
 ただ、たんの吸引や胃ろうなど医療的ケアが必要になると、利用できるサービスは限られる上、介護を担っていた家族が病気になったり、亡くなったりすると、さらに在宅生活は難しくなる。障害者が支援を受けながら少人数で共同生活を送る「グループホーム」の制度もあるが、看護が常時必要な重度の人を受け入れられるホームは少ない。
 一方、入所して療養する「重症心身障害児者施設」は全国に約二百カ所ある。「親亡き後」は入所するケースが多いが、親しんだ地域で暮らし続けることを望む人もいる。
 映画に登場する脳性まひの向島育雄さん(34)の母で、一四年にがんで亡くなった宮子さん=享年六十九=もその一人。育雄さんと二人暮らしで、自分の体の不調を感じながらも、胃ろうなどで二十四時間の介護が必要な息子を案じ、病院に行けなかった。
 がんの進行を遅らせられるが、副作用のある治療をするかと医師から尋ねられると、宮子さんは「障害のある子がいるから」と治療を選ぶ。宮子さんにとって育雄さんは、生きる「希望」だった。
 宮子さんが入院中、育雄さんは当初、病棟のショートステイで宿泊しながら、日中は通所施設に通っていたが、しばらくして入所施設に入った。宮子さんは亡くなる直前まで、育雄さんが暮らせるグループホームを切望していたという。育雄さんは葬儀でひつぎの中をのぞき込み、目を閉じた母の姿におえつする。
 障害者のきょうだいの苦悩も記録。静岡県富士市の沖侑香里さん(30)は五年前、進行性の難病で十代後半に寝たきりとなり、一七年に二十一歳で亡くなった妹茉里子さんの介護に直面した。茉里子さんを自宅で介護していた母ががんで他界。沖さんはグループホームに茉里子さんを入所させたかったが、空きがなく、介護のために名古屋市の会社を辞めて地元に転職した。

2016年、通所施設で成人式を祝った故・沖茉里子さん(左)と姉の侑香里さん=侑香里さん提供

 沖さんは茉里子さんが亡くなった約一年後「静岡きょうだい会」を設立。きょうだいを介護する人が定期的に集まり、延べ約百九十人が参加した。「介護が原因で進学や就職、結婚などに悩む人が思いをはき出せる場が必要」と話す。
 映画では、一人一人の障害者をヘルパーや医師、看護師ら専門職が連携し、支える姿も伝え、障害者をめぐる制度や課題も浮き彫りにする。撮影した映像作家で、制作会社「マザーバード」代表の貞末麻哉子さん(62)は「一人の『生』をたくさんの人たちが支え、障害のある人も多くの人生を支えている」と話す。
 ◇ 
 六日は招待上映で、午前十時から名古屋市東区のウィルあいちで。十月十七日から同市中村区のシネマスコーレで、同三十日から東京都品川区の「キネカ大森」などでも上映。詳しくは公式ホームページで(「普通に死ぬ」で検索)。

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