コロナ禍のアートの役割とは…村上隆さん、奈良美智さんら現代美術作家5人が考える<ウイルス禍と文化>

2020年9月2日 13時50分
コロナ禍におけるアートの役割などについて話した(左から)村上隆さん、李禹煥さん、宮島達男さん、杉本博司さん、奈良美智さん=東京都港区の森美術館で

コロナ禍におけるアートの役割などについて話した(左から)村上隆さん、李禹煥さん、宮島達男さん、杉本博司さん、奈良美智さん=東京都港区の森美術館で

 新型コロナウイルスにより、展覧会の中止・延期や入場制限など大きな影響を受けている美術界。文化の在り方が改めて問い直されている中、国際的に活躍する現代美術のアーティスト5人が、コロナ禍におけるアートの役割やアーティストの存在意義などを語った。 (清水祐樹)
 7月30日、東京都港区の森美術館で開かれた「STARS展」のプレス説明会。出展者の村上隆さん、禹煥ウファンさん、宮島達男さん、奈良美智よしともさん、杉本博司さんがそろって、報道陣の質問に答えた。
 李さんと杉本さんは、新型コロナを人間に対する警告ととらえた。
 生産を否定し、石や木など素材そのものを組み合わせて作品とする「もの派」として知られる李さんは「作ることを控えて自然を表現の場に引き入れようとしてきた」と自身の創作に触れ、コロナは人間の開発などへの「警告であり、暗示だ」と指摘。人間が自制すれば地球環境が回復する可能性があるとして「そういう暗示を与えるアートを見せることがアーティストの義務だと思う」と述べた。
 また、「美術は視覚的なもので現場性が大事」と、展覧会の重要性も強調。「3密回避など難しいこともあるが、やはり展覧会に足を運んで空気に触れ、作品と対話してほしい」と述べた。
 哲学的な示唆に富む写真作品などで評価が高い杉本さんは「人間は自然の一部。自ら環境を食いつぶし、文明の滅亡が目に見える範囲に。そこに警告が来た」と主張。「しんにこのメッセージを受け取り、アーティストも新しい産業社会の在り方を考えるべきだ」と訴えた。
 コロナ禍では「選別がされる」との見方を示したのは、デジタルカウンターを使った立体作品などを中心に制作する宮島さん。会わなくていい人、行かなくていい場所には「今、コロナだからさあ」と言えば済むとし、アートも「オンラインでいいよね、というのも結構あった」と説明。一方、本物に触れないといけないものはリアルにたいせざるを得ないとし、「本当に見ないといけない展覧会なら、皆さんに来てもらえるだろう」と感じたという。
 子どもを題材に無邪気さと残酷さといった相反する性格を共存させた絵画で知られる奈良さんは、栃木県の高原に暮らしていて「生活自体に全く変化がなかった」と明かした上で、コロナ禍での支障は人と人とが関わる中で生じると指摘。自身が1人でいる時には影響がなく、「自分がとても自由な中で生きていると痛感した」。「自由でいることで作品にも自由が宿る気がする」とし、そして生まれた作品が「コロナ禍にいる人々を少しでも自由にさせられたら」と望んだ。
 オタク文化を反映した等身大フィギュア彫刻などを生み出した村上さんは説明会後の報道陣の取材に、コロナ禍ではインターネット通販に積極的だと説明。「人間はアート的なコミュニケーションを求めていると思う。通販でいろんなメッセージを細かく伝え、密なコンタクトをオーディエンスと築いている」と述べた。美術館などでのインスタレーションは前時代的に感じるとし、今後は「もっと密なコミュニケーションのアートができてくるのではないかと思い、実験を始めている」という。
 ◇
 「STARS展」には5人のほか、草間弥生さんも出展。6人の初期作品と最近作の計70点を通し、活動の軌跡を紹介している。会期は来年1月3日までで、チケットは事前予約制。

関連キーワード


おすすめ情報