「困窮者追い返しやめて」23区福祉事務所に支援団体が対応改善要請

2020年9月3日 06時00分
 新型コロナウイルスの影響で生活に困窮する人が増える中、生活保護の申請を受け付けたり、相談に応じたりする自治体の窓口で不適切な対応が相次いでいるとして、生活困窮者を支援する団体が都内23区の各福祉事務所に対し、改善を求める文書を提出した。都がビジネスホテルを提供する救済事業の利用を断られるといったケースがあり、支援団体は「体よく追い返される事例が続出している」と、改善を求めている。(中村真暁)

「困窮者がひとりで相談に行くと、体よく追い返される」と、生活保護申請の対応への不適切な事例を記している支援団体の文書。適切な事例として紹介する場合は、希望者が殺到しないよう具体的な区名を伏せている


◆これまでの対応事例まとめる

 文書は今夏に出された。支援団体「反貧困ネットワーク」(新宿区)など約30団体が参加する「新型コロナ災害緊急アクション」のメンバーが今春以降、生活保護の利用を希望する人が窓口を訪れた際に同行し、担当者から受けた対応をまとめた。
 都内9市区の事例が挙げられ、ネットカフェなどで暮らしていた人からの申請を受理した後、アパートへ入居できるよう支援団体を紹介するといった評価できるケースもあるが、問題がある事例も多かった。
 4月の緊急事態宣言の発令で、ネットカフェが休業するなどして居場所を失った人に都がビジネスホテルを提供する事業について、台東区の職員が「生活保護利用者は利用できないという都の通知が出た」と説明したが、同行した支援者が交渉したところ利用できた。
 区の担当者は、ホテル以外の居所が用意できれば、それを活用するよう求める通知が都から出ていたという。本紙の取材に「救済事業の終了後も居場所を確保できるよう、簡易宿泊所などを優先的に案内する考えだった」と説明した。

◆禁止事項に反し、説明なしに宿泊所へ

 また、生活保護法は本人の意思に反し、無料・低額宿泊所などに入所させることを禁じている。しかし、港区は窓口で生活保護の利用申請をした後、何の説明もなく車に乗せ、宿泊所に連れていった。
 後日、支援団体のスタッフが入所者から助けを求める連絡を受けて区と交渉すると、救済事業のホテルに移ることができたという。区の担当者は「宿泊所について説明し、入所に同意を得たつもりだった」と釈明した。

◆ネカフェ難民らが収入途絶え路上に

 反貧困ネットワークの瀬戸大作事務局長の話では、相談者は大半が20~40代。以前はネットカフェを転々としたり、寮付きの派遣社員として働いたりしていたが、収入が途絶えて路上に出た人たちだという。同法によると、野宿やネットカフェで暮らすなど居住地がない人は、現在いる場所の福祉事務所が生活保護を決定する。瀬戸事務局長は「こうした不適切な対応があると、それぞれの事情に応じた対応ができる自治体に申請者が集中し、業務を圧迫してしまう。利用者が自己決定し、生きる権利を保証するような運用をしてほしい」と求めた。

◆「正規運用できる組織を」

 世田谷区の元生活保護担当職員で、生活保護問題対策全国会議の田川英信・事務局次長の話 国の調査で、経験年数が3年未満の担当職員が全体の6割を占める。担当職員は知識や経験が必要なのに、専門性が身に付く前に他部署へ異動することが多い。きちんとした研修がないまま、先輩の間違った指導が受け継がれていることもある。もともと人手不足に加え、コロナにより相談者が増え、対策も必要となり、勉強する時間がさらになくなっている。法律に基づいた運用ができる組織づくりが必要だ。

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