<ウォッチ!一太県政>1億円超の動画スタジオ 膨らむ疑問

2019年12月26日 02時00分

動画スタジオを開設する県庁32階の展望ホール=前橋市で

 山本一太知事が来年四月、目玉事業として県庁三十二階の展望ホールに開設するとしている約一億二千万円の動画スタジオに疑問が膨らんでいる。山本知事は「選挙の公約」と主張するが、七月の知事選で実現目標に掲げた政策集と、有権者が公約と受け止める選挙公報のいずれにも「スタジオ」の表現はない。動画事業で先進的な神奈川県と比較した上で厳しい群馬県の財政状況も考えると、数々の問題点が浮き彫りとなってきた。 (菅原洋)
 民放のキャスターやディレクターを務め、動画を熟知する神奈川県の黒岩祐治知事の手法は山本知事とは大きく異なる。
 同県はまず黒岩知事の判断により、二〇一三年にアイドルのヒット曲に合わせて知事と職員らが踊りながら名所をPRする動画を制作。職員が撮影して県費は約二十一万円にとどめ、視聴数は約四百六十六万回と異例の関心を集めた。
 こうした準備を踏まえて一五年度、執務室を有効活用しスタジオを三十六万円で整備。動画の技術指導やホームページなどの制作費を合わせても初年度は二百万円弱に抑えた。その後の運営費も毎年百万円台から二百万円台。群馬県のように高額な機材は購入せず、職員が扱う機材は賃借だ。同県議会でも「機材はリースも考えられるのでは」などと与野党から疑問が相次いでいる。
 神奈川県は硬い行政の話題でも実績を出している。一七年六月配信の「弾道ミサイル落下時にとるべき行動例」は視聴数約十五万五千回、一八年七月配信の「津波発生時にとるべき行動例」は同約十三万三千回だ。
 これに対し、群馬県のスタジオはカメラ五台、スポットライト二十二台など機材購入・設置費に約六千二百万円、設計・工事費に約五千五百万円をかける。
 ただ、同県の財政状況は厳しい。借金の県債残高は二〇二四年度末の推計で過去最高の一兆三千五百五億円に上る見通し。
 山本知事は「スタジオの設置は選挙中に集会や演説で何度も言及した公約だ。県議会の議決も得た。群馬県のためになるという確信がある」と説明する。
 一方、十月に県内でも大きな被害をもたらした台風19号では、県は被災者に約二億五千万円の財政支援をする。しかし、住宅被害に遭った千棟弱のうち、一部損壊など約半数は県や国の財政支援はない。
 約百六十棟が浸水被害を受けた高崎市新町第七区の区長を務める吉田満さん(71)は「区内で県営住宅が八戸床上浸水し、家財道具を処分して苦しい生活をしている。多くの被災者は財政支援が全然足りない。災害とスタジオは別の予算だろうが…」と複雑な心境を打ち明けた。

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