曽祖父が夢見た芋焼酎「新(あらた)」実現 裾野の老舗酒販店「みしまや」 創業100周年で300本

2020年9月4日 07時36分

真一郎さんの夢を引き継ぎ、商品化した「新」を見つめる江森慎さん=裾野市佐野で

 裾野市の老舗酒販店「みしまや」の江森慎(まこと)さん(37)が、創業者の曽祖父が夢見たオリジナルの芋焼酎造りを実現した=写真。自宅に残されたノートで曽祖父が果たせなかった無念を偶然知り、背中を押されるように商品化を決意。創業百周年の今年、県内の酒蔵に依頼して製造し、七月に約三百本を販売した。今回はすぐに完売したが、来年以降も販売を続ける。(佐野周平)
 江森さんは五年前、印刷機メーカーを辞め、将来的に店を継ぐ覚悟で裾野に戻ってきた。約一年後、自宅を片付けている際に押し入れから曽祖父・真一郎さん=一九六二年に六十九歳で死去=のノートを見つけた。表紙には、四五(昭和二十)年を示すと思われる「S20」の文字。創業後に酒造場を建て、地元産のサツマイモで芋焼酎を造ろうとしたが、酒造免許を取れずにあと一歩のところで頓挫した、と書かれていた。
 富士山麓の裾野市は、酒造りに欠かせない水資源が豊富。江森さんはかねて、いつか地元に酒造所を構え、地酒を造りたいと思っていた。「写真でしか見たことがない曽祖父が、自分と同じことを考え、挑戦していたことに驚いた。ずっと頭にあったことなので、見た瞬間に『やっぱりこれだ!』と覚悟が固まった」。
 こだわったのは、地域住民と協力しての酒造り。地元NPO法人「みらい建設部」の活動に参加し、市内で育てたサツマイモを使った。「地域に支えられて今がある。多くの人の思いを乗せた商品にしたかった」。江森さんの思いに共感し、栽培作業を手伝う人が出るなど、支援の輪が地域に広がった。
 製造は三月、同じ富士山麓にある富士錦酒造(富士宮市)で始まり、約三カ月後に完成した。百周年を迎え、新たな一歩を踏み出すことにちなみ「新(あらた)」と名付けた。
 七二〇ミリリットル入りを三百本作り、七月下旬から二千円で販売。製造量が少ないため割高の価格設定になったが、八日後には完売した。購入者は地元住民が大半で、知人や友人から商品を教えてもらったという人が多かった。
 原料に使うサツマイモの栽培など、既に来年生産分の準備は始まっている。江森さんは「地元に酒造場を構え、全ての酒造りを裾野で完結させることが最大の目標」と先を見据える。「新」が完売した後、真一郎さんの墓前で誓ったように、これからも裾野ならではの酒造りを目指す。

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