クールジャパン リモートで継承

2020年9月4日 07時56分
 新型コロナウイルスが世界で猛威を振るい、インバウンドどころではない状況が続いている。気軽に日本の伝統芸能を楽しんだり、習得したりする外国人も大幅に減ってしまった。そんな中、オンラインによる稽古を模索する人たちも出てきた。クールジャパンをリモートで継承する人たちを紹介する。 (ライター・神野栄子)

◆日本舞踊⇔カナダ

カナダの生徒に教える花ノ本寿=東京都練馬区で

 日本舞踊家の花ノ本寿(ことぶき)(44)は稽古場(東京都練馬区)で、インターネットのコミュニケーションツールを使って、カナダ・モントリオールの会社員、ダフネ・ドーレーさんを指導していた。初心者向けの作品「京の四季」を三味線の音色をまねしながら「足が右、左と出たら、(手の指で)遠くを指します」と細やかに教えていた。
 ドーレーさんは寿の日本舞踊をネットで知って興味を抱き、二〇一六年に何度か来日し、基本曲「菊づくし」や「松の緑」を学んだ。その後中断していたが、六月からリモートレッスンを始めた寿に声を掛けられ再開した。稽古は毎回三十分で月四回。扇子の扱い方など基本の所作から学ぶ本格的な稽古となっている。
 通常の稽古や公演が開けない日々が続くが、寿は「今だからできることを」と地球規模で教えることを思いついた。「外国の方々が気軽に稽古できる道が開けた」。ドーレーさんは画面越しに「目線や手、体の動きを同時に行う必要があり難しいが、ダンスやバレエとの違いが分かり楽しい」と笑顔で答えた。

◆和太鼓⇔6カ国

6カ国の参加者に和太鼓を指導する座古瑞穂(左)

 和太鼓音楽グループ「大江戸助六太鼓」の座古瑞穂(ざこみずほ)(50)は七月中旬、英国やフランスなど六カ国の二十七人を結んで、ネット上で講習会を開いた。五月に英仏などで打法の実地指導をする予定だったが断念。ところが「それでも太鼓の勉強をしたい」という英仏の愛好家からの熱烈な要望を受け、ネット講習会に至った。
 座古は一九九三年、和太鼓ブームをけん引した一グループ「大江戸助六太鼓」に入門。三十カ国以上で公演し、華やかで切れ味鋭い芸風を持ち味に和太鼓の魅力を広めている。和太鼓の稽古は、一対一で顔を突き合わせる指導が原則だが、写真や動画を用いて座古が打法の特徴などを講義。質疑応答の時は全員が映る画面に切り替えて挙手してもらった。指導を受けたことのある参加者は、ポイントの再確認ができたという。
 ネットでの稽古は気軽に参加してもらえるメリットがある一方で、「太鼓を打つスピード感が(タイムラグなどで)伝わりにくい」といった課題も見つかった。

◆津軽三味線⇔欧米

新田昌弘(右)が構築したシステムで学ぶ愛好者

 札幌市を拠点に活動する津軽三味線奏者の新田昌弘(36)は約十年前から、ネットレッスンに力を入れてきた。二〇一一年、コミュニティーサイト「国際三味線協会 Bachido(撥道(ばちどう))」の立ち上げに尽力し日本代表を務めている。会員は四千人を超えた。
 この時に操作しやすいネットレッスン用の動画通話システムを構築。これを使って、カナダやドイツなどに住む愛好者向けに教えている。初心者は富山県民謡の「こきりこ節」、長く稽古している人は「津軽五大民謡」などに挑んでいる。生徒に弾いてもらい、弾き方を細かくアドバイスしている。
 コロナ禍で渡航しての指導ができない状況が続くが、新田は「講師は『ネットだからこれしかできない』というのではなく、見合った教え方を開発しないといけない。ネットレッスンの楽しみ、魅力をもっと広げたい」と話す。

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