<ふくしまの10年・新天地にそよぐ風>(4)溝埋まり 温かい暮らし

2020年9月4日 07時50分

2017年の夏祭りに参加したときの西崎芽衣さん(左)=福島県楢葉町で

 立命館大の学生による「そよ風届け隊」のもう一人の創設メンバー、西崎芽衣さん(28)は、大学を卒業するにあたって都内の人気有名企業を受験し、内定を勝ち取った。「出身は東京の八王子で、大学は遠い京都へ行くことを許してもらいました。就職は東京でして、親と一緒に住むつもりでした」
 ところが内定先で面談などをするうちに、何か感覚が違うと思い始めたという。
 「おかしいなと悩んでいたら、休学中に臨時職員としてお世話になった楢葉町の一般社団法人『ならはみらい』を思い出しました。人が温かくて、普通に暮らせる。そんな人たちがいる町に戻りたくて仕方がなくなったんです」
 楢葉町は福島第一原発の南側、半径二十キロの内側に位置する。原発事故で全町避難となったが、二〇一五年に避難指示解除になった。西崎さんが「ならはみらい」に正式入社したのは、一年半後の一七年四月だった。
 「会社や町の方たちは本当に親切にしてくれました。でも、同年配の町の人たちと打ち解けるまで、時間がかかりました。彼らも、なんとか町に活気を取り戻そうと熱い気持ちで働いていたのに、よそから来てマスコミにチヤホヤされた私が疎ましかったみたいです」
 だが溝は少しずつ埋まっていき、昨年、夏祭りを復活させるなどの活動で知り合った役場職員の男性と結婚した。
 「本当に楢葉町に根を下ろしたんだね、と言われることがあります。でも実はそうでもない。夫とは、いろいろな可能性を求めて選択していこうと話し合っています。必要があれば家族でよその町へ引っ越してもいいかも。でも今は、この町の人とのつながりを大切にしたいんです」
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