藤井聡太2冠の快進撃で将棋盤も売れています 全国シェア8割の茨城のメーカー「注文じわじわ増えていく」

2020年9月4日 13時55分
完成した将棋盤を手に持つ泉謙二郎社長=8月、茨城県神栖市で

完成した将棋盤を手に持つ泉謙二郎社長=8月、茨城県神栖市で

  • 完成した将棋盤を手に持つ泉謙二郎社長=8月、茨城県神栖市で
  • 木村一基前王位(右)を破り、史上最年少で二冠を達成した藤井聡太新王位=8月20日、福岡市中央区(撮影・穴井友梨)
 将棋の王位戦で勝利し、史上最年少の2冠を達成した高校生棋士の藤井聡太王位(18)=棋聖=の快進撃で、将棋盤が売れている。碁盤・将棋盤の全国シェア8割以上を占める老舗メーカー「茨城木工」(茨城県神栖市)には注文がひっきりなし。泉謙二郎社長(71)は「どんどんタイトルを取ってもらいたい。将棋の人気が続き、将棋人口が増えてくれれば」と藤井フィーバーに期待を寄せる。(水谷エリナ)
 「将棋盤が、つくったそばから出て行く」
 販売状況について、泉社長はそう手応えを表現する。前年比2割増の注文が入り、工場では10人弱の従業員が、忙しい中でも丁寧に一つ一つを仕上げる。茨城木工は、数十万円から3000円ほどの盤まで年間約20万枚の碁盤・将棋盤を製造する。
 近年は最盛期に比べ、生産量は25%ほどに落ち込んでいるが、今年は様相が違った。通常、自宅で過ごす時間が多い冬を越えると生産量が落ちるが、新型コロナウイルスによる巣ごもり需要のためか、注文の落ち込みがなかった。
 さらに、藤井王位の活躍が背中を押した。泉社長は「(7月に)初タイトルを取ってから、高潮になっている。2冠を達成し、またじわじわと注文が増えていくと思う」と語る。「子どもにいい盤を買ってあげたい」という問い合わせや、以前はたまにしかなかった将棋盤の修理依頼も集中的に入っている。
 茨城木工は1956年、地元の鹿島灘産ハマグリを原料とする碁石の製造会社として創業。良質のハマグリが入手しにくくなると、7年後に碁と将棋の盤製造に方向転換した。
 立地する波崎地区や、隣の千葉県銚子市は漁業が盛んで、かつては木造船の船大工が多かった。銚子市には木製のしょうゆだるを造る職人もいたが、いずれも材料が鉄やプラスチックなどに代わったのを機に、盤製造へと転身していった。
 こうした背景もあり、一時期は近隣に5社ほどのメーカーがあったが、存続するのは茨城木工のみ。後継者不足や囲碁・将棋人口の減少などで、次々と撤退していった。
 約半世紀前に、会社が生き残るためのヒット商品に恵まれた。脚がない普及品で、割安でテーブルに置きやすいのが受け入れられた。その際、手作業の高級品のように、マス目が盛り上がって描けるようにする機械も開発した。
 泉社長は、藤井フィーバーで将棋や囲碁に親しむ女性や若い人が増えることを願う。囲碁界では史上最年少棋士の仲邑菫なかむらすみれ初段(11)に注目する。「女性でやる人が増えれば、囲碁・将棋人口が倍になる。どんな盤だと、女性受けがいいかも考えている」

◆天童の将棋駒も回復傾向


 将棋駒の生産量日本一を誇る山形県天童市でも「藤井2冠効果」が出ている。
 職人ら30人ほどが加盟する県将棋駒協同組合(天童市)によると、新型コロナウイルスの影響で観光客が大幅に減り、土産品など市内での販売がゼロに近い状態が続いた。だが、2冠を達成してから、駒の取引は増え、全体的に回復傾向にある。
 駒は初心者向けの1000円台から、50万円近くするものまである。
 藤井王位が2018年に7段昇段を果たした際も「孫に買ってあげたい」との問い合わせが増えたといい、今度もニーズが増えることに期待が集まる。
 組合事務局の津藤浩志さんは「明るい話題で、組合が前向きに動きだせると期待している」と話した。

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