<ふくしまの10年・新天地にそよぐ風>(5)復興の一助に 充実の日々

2020年9月5日 07時22分

復興施設の管理や視察の対応などの仕事をする森雄一朗さん=福島県楢葉町で

 実は、福島県の被災地で活動する「そよ風届け隊」のメンバーはもうひとりいる。楢葉町の一般社団法人「ならはみらい」で働く森雄一朗さん(25)だ。創設メンバーの三人組にとっては立命館大の後輩にあたる。
 群馬県大泉町出身の森さんも学生時代からボランティアバスで被災地を巡った。福島県に最初に来たのは二〇一五年。海岸や町外れには津波で流された車が転がっていた。復興が進む岩手、宮城両県を見た後だけに、被災の傷痕が色濃く残る福島の様子に驚いた。避難指示が解除された楢葉町にたどり着いたものの、帰還した住民は数えるほどだった。「ここは日常とは別の世界。まだ人が住めるところではないと思いました」
 ところが、住民の一人が、道端のプランターに植えられた花に手を合わせるように感謝している姿を目の当たりにした。「普通に生活できることのありがたみを、この町の人たちは知っているんだ」
 そんな人たちのためにフリーペーパーをつくり、町の情報を伝えて喜ばれたのが、大切な思い出になった。
 大学を卒業し地元・群馬県の銀行に就職したが、半年で辞め、楢葉町に戻った。元農地に新設された復興商店街の管理や視察ツアーの案内、語り部の会の窓口などの仕事に追われる毎日だ。町は確実に復興していると手応えを感じている。
 楢葉町の現在の居住者は約四千人。住民登録者のうち町内に居住する率は59%に増えた。献身的な町の人々の努力があると感じる。
 「そういう人の仲間に入れてもらえて、一日一日ちゃんと生きているという実感があります。僕はきっと一生この町で生きていきますね」
 森さんは、そう話して胸を張った。
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