都内保健所アンケート 4割超が「調査見直すべき」<新型コロナ>

2020年9月5日 19時49分
 感染拡大防止を目的に行われている新型コロナウイルス感染者らの行動歴や感染経路の調査について、本紙が東京都内の31保健所にアンケートしたところ、4割超の13保健所が「見直すべきだ」と回答した。国内で初めて感染が確認されてから7カ月半余。調査が保健所の重い負担となっている実態が浮かび上がった。(松尾博史、小野沢健太)
 アンケートは8月下旬、23区と保健所設置市の八王子市、町田市、多摩・島しょ地域の業務を担う都の6保健所を対象に実施。「多忙のため回答が難しい」とした杉並区を除き、30保健所から回答があった。
 感染が再拡大した7月以降、感染経路が判明した割合を尋ねたところ、約7割の21保健所が「半分ほど」と回答。中央区、品川区、中野区、町田市の4保健所は「2~3割」とさらに少ない。複数のクラスター(感染者集団)が発生した足立区に加えて文京区、渋谷区の3保健所は「7~8割」だった。
 経路を追えない理由としては、「患者の協力や記憶に頼るところが大きい。外国人の場合、言葉の壁もある」(足立区)「連絡が取れない例が少なくない」(中野区)といった意見が出た。
 調査の見直しを求めるのは、千代田や新宿など13保健所。全員の調査をやめ、ハイリスク集団やクラスター対策などに調査を絞るよう求める意見が少なくない。見直しには言及はしないものの、「現状のやり方は負担が大きい」(練馬区)「患者がさらに増加した際、どこまで調査できるか不明」(板橋区)など厳しい実情を訴える記述も複数あった。
 政府は現在、調査の見直しを含め、感染症法上の措置をどうすべきか、検討を始めている。

◆長期化見据え、体制づくり急げ

 ここまで感染者が増えると、現状の体制で感染経路を徹底的に調べて封じ込めるのは難しい―。多くの保健所の回答からは、そんな実情が浮かび上がる。
 都は4月以降、各保健所の業務を支援するため、最大で約130人の職員を派遣している。だが、「都や他部署からの応援を含めた現状の人員で十分か」との問いに、19の保健所が「いいえ」と回答。多くの保健所が「職員の労働時間の抑制や休日の確保」「収束の先行きが見通せず、業務や人員の計画が立てにくい」を悩みに挙げた。
 新型インフルエンザ流行後の2010年、有識者会議がまとめた厚生労働省への提言には、感染症対策に関わる保健所などの体制の大幅な強化や人材の育成、検査体制の強化が盛り込まれていた。しかし「医療職、事務職とも即戦力の人材は不足」(多摩立川保健所)といった回答からは、国が感染症への備えを軽視してきた側面が浮かぶ。
 都内の感染者数は累計で2万1000人を超え、検査件数は多い日には約7000件に上る。感染収束の見通しが立たない中で、コロナ対策の最前線である保健所の疲弊は限界にきている。「保健所崩壊」を起こさないためにも効率的な調査や他の業務の軽減、人員と予算の拡充など、感染拡大の長期化を見据えた抜本的な対策を急ぐべきだ。(松尾博史)
国際医療福祉大大学院の和田耕治教授(公衆衛生学)の話  多忙な保健所の実情を考えれば、このような認識は理解できる。感染状況に合わせた柔軟な対応が求められ、重症化しやすい高齢者施設の入所者を優先するなど、戦略的に調査を進めるべきだ。自治体が連携し、円滑に調査が進んだ経験や手法を共有することで、まん延防止のための効果的な調査を行ってほしい。

行動歴や感染経路調査  検査で感染者が判明した後、保健所は感染者らから症状や行動歴、接触した人を聞き取り、感染拡大防止に努める。正式には「積極的疫学調査」と呼ばれ、国が都道府県などに出した実施要領では、感染者だけでなく、濃厚接触者も調査の対象になっている。

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