現場悲鳴「人手足りない」残業190時間も<都内保健所アンケート>

2020年9月5日 20時12分

 新型コロナウイルスの感染が長期化する中、東京都内の保健所で保健師らが業務の負担にあえいでいる実態が本紙のアンケートで浮き彫りになった。逼迫ひっぱくした状況が一向に改善せず、「誰がいつ倒れてもおかしくない。担当者が疲弊していく現状はどうにもならない」(品川区保健所)と窮状を訴える。(小野沢健太、松尾博史)

◆交代制の確立必要

 アンケートに回答した30保健所のうち、約6割の19保健所が「人員が十分ではない」と回答。墨田区保健所では、保健師1人が1日に調査できる感染者は2~3人だが、検査などに人員を割く必要もあり、週に3、4日は調査が追いつかないという。
 ある保健所では8月、検査の手配や文書作成などに追われて残業が190時間以上だった事務職員がいた。「過労死ライン」といわれる月80時間をはるかに上回る。常勤の保健師は4人で、看護師12人が応援にきていたが、保健師らは平均で120時間ほどの残業を強いられたという。
 北区保健所は「職員の自宅に午前2時や3時に、医療機関から感染者の移送先の調整依頼が来ても対応できない」として、「保健所も消防のように、24時間の交代制勤務をできるような体制を取るべきだ」と訴える。新宿区保健所も「土日や夜間も対応している。職員のシフト制が組めるような体制が望ましい」と指摘した。

◆偏見や差別恐れ、調査難航

 調査自体の難しさを指摘する声も多い。16保健所が「感染者の協力を得られず、調査が進まない」ケースがあったと回答した。世田谷保健所は「偏見や差別を恐れ、行動歴を教えてもらえず対応に苦慮している」、池袋保健所は「感染者への差別が広がるほどに口が重くなり、調査が難航している」と答えた。調査に強制力はないため、中央区保健所は「調査拒否に罰則が必要だ」と訴えた。
 感染が再拡大した7月以降、経路を7割以上特定できたのは3保健所しかない。新宿区保健所は「不特定多数に感染が広がった現状では、クラスターが発生した場合やリスクの高いケースなどに特化して調べるべきだ」と、感染者全員を対象にした検査の見直しを求める。
 また、感染症法に基づき、新型コロナウイルス感染症を危険度が5段階で2番目に高い「2類」以上の措置を取っていることに見直しを求める意見も板橋区、荒川区、江東区など9保健所から上がった。「感染拡大状況に見合った効率的、効果的な対策へのシフトチェンジを望む」(多摩立川保健所)と現場の負担軽減を求めている。
都内の感染経路不明の割合  最も割合が高かったのは、政府が緊急事態宣言を出す前日の4月6日で89%。6月中旬~下旬は20%を切ることもあったが、7月中旬ごろからは60%前後で推移する。最近目立つ「家庭内感染」も、最初の一人の感染場所が分からないケースが多い。

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