ワクチンは水利・領有権問題と引き替え 中国は外交の切り札に

2020年9月6日 05時55分

8月24日、メコン川流域5カ国とのオンライン首脳会議に臨む中国の李克強首相(中央)らを映す画面=共同

 【北京=坪井千隼】中国が開発中の新型コロナウイルスのワクチンを、外交カードとして前面に打ち出している。経済圏構想「一帯一路」沿線国を中心に相次いでワクチンの優先供与を約束。マスクや医薬品援助を展開した「マスク外交」に次ぐ「ワクチン外交」で、各国への影響力を強めたい考えだ。
 国営新華社通信によると、李克強りこくきょう首相は先月24日にタイやベトナム、ミャンマーなど東南アジアのメコン川流域5カ国とのオンライン首脳会議で、「ワクチン開発が成功し利用が始まれば、5カ国に優先的に提供する」と表明した。
 メコン川上流にダムを建設する中国は、下流の流域国と水利用を巡る問題を抱えるほか、ベトナムとは南シナ海の領有権問題でも対立している。このためワクチンを外交の切り札として懐柔を図った形だ。
 中国はフィリピンとも南シナ海問題で対立しているが、ドゥテルテ大統領は7月末の演説で「中国と戦争する余裕はない」とした上で、「中国がワクチンを開発した場合は、優先的に提供してほしいと申し入れた」と述べた。地元メディアからは「ワクチンをもらうために領有権問題を棚上げし中国に妥協した」と批判的な見方も出た。
 8月20日には王毅おうき国務委員兼外相がインドネシアのルトノ外相と会談。インドネシアの製薬会社にワクチン技術を供与するなど生産、供給を支援することで合意したほか、中東やアフリカ諸国にも相次いでワクチンの優先供与を約束した。香港紙「明報」は論評記事で「世界で先行する中国ワクチンは、外交カードでもある」と論じ、「中国が優先供与を約束した国の人口を合算すると、すでに20億人を超えた」と述べた。
 ワクチン開発を巡っては、世界で7つが最終段階の臨床試験に入り、うち中国勢が4つを占める。中国メディアによると、少なくとも2つが年内の供給開始を見込んでおり、7月からは医療従事者らを対象にワクチンの緊急接種を行っている。北京で今月4日から始まった国際展示会では開発中のワクチンが初公開され、中国のワクチン技術をアピールした。

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