自分にかけた呪いを解こう 「美の常識」を覆す 長田杏奈さんの言葉

2020年9月7日 07時27分

長田杏奈さん

 「反骨の美容ライター」と呼ばれる人がいる。「おさ旦那」を名乗り、SNSで大きな発信力を持つ長田(おさだ)杏奈さん。昨年出した初の単行本『美容は自尊心の筋トレ』(Pヴァイン、1628円)はたちまち売り切れに。今春、責任編集を務めた雑誌『エトセトラ VOL.3』(エトセトラブックス、1430円)も出版され、好調な売れ行きだ。支持を集める理由とは−。 (出田阿生)
 若さと美しさを努力で手に入れる、というのが美容本のイメージ。ところが長田さんの本のページをめくると、そんな予想は裏切られる。「女子力より人間力」「この世にブスは存在しない!」…。容姿のコンプレックスで悩む人に、そっと手を差し伸べるような言葉が並んでいるのだ。
 美容ライター歴十五年。美容部員の母に育てられ、長田さんにとって美容は「楽しくて、うれしくなるもの」だった。だが、仕事を通して「イタい(年齢不相応)と思われたくない」など、他者のマイナス評価を気にする人の多さに気が付いた。そこで始めたのが、SNSでメッセージを発信する「ゲリラ活動」だ。
 例えば、シミ=隠したり消したりするべきもの、が美容の常識。これに反して、女優桃井かおりさんの「お肌のシミは水玉模様。はやらせればいいのよ」という言葉を紹介した。
 整った形より、傷やゆがみに魅力を見いだす日本の「わび・さび」文化を引用し、発想の転換でコンプレックスを解消する方法も提案した。長田さんが自身の顔を評するとこんなふうになる。「エラが張った顔→知的で意志的なフェースライン」「地味な目→柴犬のようなつぶらな瞳」。「このバランスが私の顔だから、いいの」と軽やかだ。
 「自分にかけた呪いを解こう」という率直な発信は反響を呼んだ。「やっと鏡で自分の顔を見られるようになった」「醜形恐怖症に悩んできたけど、少し楽になった」と感想が寄せられた。「あまりにも切実で胸をつかれました」という。
 雑誌「エトセトラ」ではアンケートを実施し、千三百三十四人が回答した。「自分の身体について、違和感や不安、恥ずかしさを持ったことはありますか」との問いに、「ある」と答えた人は八割以上=図A。「メディアや広告で発信されるボディイメージや身体にまつわる情報に違和感や不満を感じたことはありますか」の設問も八割超が「ある」と答えた=同B。
 「自分の身体が自分のものでなくなったような気がしたことがある」という人は半数近くにも=同C。痩せろ、胸は大きくセクシーに、脱毛や化粧は最低限のマナー…。広告やメディアが流す「美の基準」で、多くの人が自虐に追い込まれる構図が浮かんだ。しかも、そんな価値観の刷り込みは子ども時代から始まる。
 一方で、化粧品メーカーが「肌は白いほど美しい」という前提の「美白」という表現を変えるなど、美容の世界も少しずつ変化し始めた。そんな変化が心強い。長田さんは言う。「わたしたちを苦しめるものと闘った先に、じゃあ何がすてきなのかというイメージをつくりたい」

美容は自尊心の筋トレ


エトセトラ VOL.3


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