本じゃないよ、カレーだよ 調布発 ブック陳列10周年 レトルト350種ズラリ

2020年9月9日 07時05分

本を選ぶかのようにレトルトカレーを選ぶ人たち=調布市の北野エース調布パルコ店で

 幅の広い大きな棚にズラリと並んだ色とりどりの表紙。まるで本屋にいるような錯覚に陥ってしまうが、実はここは食品売り場である。整然と陳列されているのは、本ではなくレトルトのカレー。シャレたアイデアで話題を呼ぶ北野エースの「カレーなる本棚」が誕生から十年を迎えた。
 本棚の前に立った人々が楽しそうに本…ではなくカレーを選んでいく。北野エース調布パルコ店の印出井(いんでい)俊洋店長(35)は「本棚を見た瞬間に歓声をあげるお客さまもいますね。写真撮影もOKにしているので、スマホで撮っていく方も多いんですよ」と話した。
 北野エースは全国の百貨店などでテナントを展開する食のセレクトショップ。中でも有名なのが、この「カレーなる本棚」だ。自慢はその品ぞろえ。店舗によって違うが、常時百五十から三百種類を用意。調布パルコ店では自社製品からご当地カレーまで三百五十種類のレトルト箱が、横四百九十センチ×縦百九十センチの大型本棚に並べられている。
 本物の図書館さながら、都道府県や素材などで分類しているが、「非常に数が多い上、頻繁に新しいものを仕入れるので、パートさんの中には、どこに何があるのか分からなくなってしまう方もいます」と印出井店長は苦笑した。

「カレーなる本棚」の発祥の地・北野エース調布パルコ店の印出井俊洋店長

 きっかけは二〇〇九年。できるだけスペースを使わず、見やすくレトルトカレーを陳列する方法を考えていた同社社員が、本に見立てて並べることを思い付いた。東武池袋店で試し、好調だったことから翌一〇年に調布パルコ店で本格導入。「カレーなる本棚」と命名した。
 アイデアが当たったことを受け、同社では現在全国九十六店舗のうち、約八十店舗でこの陳列を展開する。「詳しい数字は明かせませんが、売り上げはこの十年間で右肩上がりです」(同社広報)。一二年には「カレーなる本棚」を、一三年には食品における「ブック陳列」を商標登録し、経営の柱の一つに成長させた。
 日本におけるレトルト食品の生産量は着実に増え続けている。日本缶詰びん詰レトルト食品協会によると、一九年のレトルト食品の合計は三十八万三千二百トン。一〇年に比べて約六万トンも増えた。中でもカレーは全体の約半数を占め、年間で約十六万四千トン、二千五百万箱を誇る。
 レトルト食品は一九五〇年ごろ、米国陸軍が研究し始めたことが始まり。日本では六八年に大塚食品工業(現大塚食品)が「ボンカレー」を発売し、市場が広がった。同協会によると、近年では百社を超える企業で五百種類以上の商品が生産されているという。
 調布パルコ店の「カレーなる本棚」は今年で十周年。ネット上では「これ考えた人、天才なのでは」「買い物、めっちゃ楽しい」と書き込みが続く。印出井店長は「毎週来店され、『棚の順番に食べているんだよ』と言うお客さまもいます。何度来ても楽しめる場所になっているので、ぜひ一度いらしてください」と表情を崩した。

多種多様のレトルトカレー

◆3皿の本棚 名作を味わってみた

 北野エースでは十周年企画として、同社スタッフがお薦めする二〇一九年のレトルトカレー大賞を発表している。それぞれ三部門の一位を実食。本紙の書評コーナー「3冊の本棚」ならぬ「3皿の本棚」として紹介したい。

(1)

 お肉部門の一位は(1)『飛騨牛ビーフカレー(吉田ハム、九〇七円)』。牛を使った王道派でとにかく、肉のうま味が舌に乗る。主役のビーフの硬派感、妥協を許さないタフな生き方はまるでカレーのハードボイルド小説だ。

(2)

(2)『かきカレー中辛』(レインボー食品、五〇〇円)。ご当地部門の一位は広島県産のカキを使った逸品。牛乳、バター、ココナツミルクのハーモニーが優しい。辛いのに甘さを感じる。例えるなら、さまざまな登場人物の思いが交錯する恋愛小説か。

(3)

 名店部門の一位、(3)『牛テールカレーゴロット』(長崎豊味館、一五〇〇円)は、三日間かけてじっくり煮込んだ牛のしっぽを丸ごと味わえる。どうしたらこんな圧倒的な味を出せるのか、謎だ。ミステリー小説のような味わいと評したい。
文・谷野哲郎/写真・木口慎子
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