進む駅のバリアフリー 法整備20年、差別解消法も後押し

2020年9月9日 07時16分

車いす利用者の乗車前に板を渡す駅員=名古屋市営地下鉄桜通線名古屋駅で

 障害者や高齢者が自由に移動しやすい社会の実現を目指す「バリアフリー法」。前身の「交通バリアフリー法」が施行され今年で20年になる。この間、主要な鉄道の駅にはエレベーター設置などが進み、駅員による声掛けや誘導なども積極的に行われるようになった。一方、利用者の少ない無人の駅では今も段差などが残り、当事者からは不安の声が上がる。 (佐橋大)
 国土交通省はバリアフリー法に基づく整備目標に合わせ、駅のバリアフリー化を進めている。二〇一一年には二〇年度末までに一日の利用者三千人以上の駅の原則すべてで段差を解消するとの目標を策定。段差解消とは、基準を満たしたエレベーターを設置するなどし、改札外からホームまで車いすで移動できるルートが確保できることを言う。
 同省によると、一八年度末の利用者三千人以上の駅の段差解消率は90・4%。一方、三千人未満の駅の解消率は22・2%だ。
 電動車いす利用者で、「愛知県重度障害者の生活をよくする会」会長の石田長武(おさむ)さん(50)=名古屋市=はこれら設備面に加え、「駅員が適切に関わってくれると、皆が駅を利用しやすくなる」と指摘する。
 石田さんが日常的に使う名古屋市営地下鉄は一一年に全駅にエレベーターが設置された。混雑時には、車いすの石田さんを電車待ちの列の最前部に駅員が誘導、電車のドアが開くと、ホームと電車の間に板を渡し、最初に石田さんを入れてくれる。こうすることで、石田さんは所定の位置に移動しやすくなった。
 ただ、障害者も多く利用する市役所駅にもかつてはエレベーターはなく、階段脇の昇降機を利用。全国には、荷物用のエレベーターで車いすの人を運ぶ私鉄もあった。これらの改善に、バリアフリー法が大きく貢献したという。
 もう一つの転機が一六年の障害者差別解消法。障害者への合理的配慮を拒否することは差別にあたると法的に定義。事業者に合理的配慮を義務付けている。
 石田さんに対する駅員の誘導などは、同法施行後に大きく改善。石田さんは「渡し板がなくても電車に乗り込めれば一番いいが、誰もが利用しやすくなるにはどうしたらいいかを考えてほしい」と話す。
 視覚障害者で社会福祉法人で働く愛知県刈谷市の瀬戸山健人さん(27)も、人との関わりで、駅を使う際の利便性や安心感が増すと感じている。
 瀬戸山さんが愛知県内の鉄道の駅を、白杖(はくじょう)をついて歩いていると、「どちらまで行かれますか?」「お手伝いしましょうか?」と駅員から声を掛けられることが、この数年で増えた。トイレの場所が分からないこともあり、声掛けは心強いという。地下鉄の駅では音が反響し、方向感覚を失うこともあり、安全のためにも声掛けは有効という。
 一方、国交省によると、駅員のいない無人駅は全駅の約半数に上る。多くがバリアフリー化の対象外だ。
 愛知県南知多町の名鉄「内海」駅は五月下旬から無人に。高架だが、エレベーターは未設置で、車いすの乗客の乗降には駅員が同伴して階段の昇降装置を使う必要がある。利用者は一日平均約千三百人で、目標の対象外の駅だ。
 名鉄の広報担当者は「新型コロナの影響で利用者が減ったため、(無人化は)当面の間」。これまで周辺の有人駅に前日までに連絡すれば、必要な時間に駅員が対応しており、無人化後も変わらず対応できるという。また、無人駅はインターホンで主要駅につながり「(障害者が)不便を感じたときにはできる限り、対応している」と話す。
 ただ、駅を使うことが多い車いすの男性(19)は「どうなるのか…」と不安がぬぐえない。愛知県重度障害者団体連絡協議会副会長の辻直哉さん(48)は「バリアフリー化が進んでいない駅が無人化でさらに不便にならないよう、注意が必要」と危惧する。

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