トニトニCDジャケット、ラインスタンプ…光る障害者の感性、商品化相次ぐ コロナ禍でもホッと
2020年9月9日 14時00分
障害がありながら、豊かな感性で絵を描き続けている人たちがいる。CDジャケットやスニーカー、LINE(ライン)スタンプなどのデザインとして採用されたケースも。新型コロナウイルスの治療に従事している医療関係者を支援するための商品もある。コロナの影響で、重苦しい雰囲気が漂う中、温かく、ユーモアあふれる絵は見る人をホッとさせ、共感の輪が広がっている。(小佐野慧太)
◆金沢の中2 輪島貫太さん
8月、ジャニーズ事務所からチャリティーCDが発売された。タイトルは「smile(スマイル)」。アイドルグループ「嵐」をはじめ、事務所所属の15組が参加するユニットが歌う2曲を収録。収益金は医療支援などに充てられる。CDジャケットのデザインを描いたのは金沢市の中学2年輪島貫太さん(13)だ。
地球をたくさんの人やキャラクターが取り囲み、楽しそうに歌っている絵で、輪島さんは「多くの人が笑顔になってくれたらうれしいな、と思って描きました」とほほえむ。
2歳の時に自閉症と診断された輪島さんは、幼いころから画用紙にクレヨンで絵を描いてきた。母満貴子さん(40)が3年前に絵を写真共有サイト「インスタグラム」に投稿したところ、企業から「デザインを依頼したい」との要望が寄せられた。昨年はアシックスのブランド「オニツカタイガー」のスニーカーの絵柄、今年は東京ガールズコレクションで配られた食べ物を持ち帰る紙箱のデザインと、大手タイヤメーカー「ブリヂストン」のホームページのイラストを手掛けた。
輪島さんは「僕の絵を見て、ほっとするような気持ち、楽しくなるような気持ちになってくれたらうれしい」と話す。
◆奈良の木村昭江さん
ラインスタンプ用の絵を描いたのは、奈良市の木村昭江さん(41)だ。ユーモアあふれるキャラクターが箱にぎゅうぎゅうに押し込められた姿を描いた「密です!!」、民族衣装を着たキャラクターが人と距離を保つよう呼び掛ける「ソーシャルディスタンス」など、32種類のデザインがセットで販売されている。コロナの感染防止を呼び掛けるメッセージ入りだ。
木村さんは生まれつき、知的障害がある。奈良県立高等養護学校を卒業後、障害のある人が創作活動するスペースが併設されている福祉施設「たんぽぽの家 アートセンターHANA」(奈良市六条西)に通う。
木村さんの絵は、靴下やストラップなどのデザインとして使われてきた。木村さんは「私もラインを使うから、スタンプになってうれしかった。自分以外の人もすてきな作品をつくっている。商品に使ってほしい」と笑顔を見せた。
トヨタ自動車(愛知県豊田市)は1995年から、障害のある人の創作活動を支援。作品を購入して社内に飾ったり、ラッピングカーのデザインを発注したりしている。木村さんにラインスタンプの作成を打診したのもトヨタだ。創作活動を支援する動きは、民間企業や自治体に広がっている。
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