政府「災害関連死」の基準作らず 認定ばらつき解消は困難に

2020年9月10日 05時50分

屋根にブルーシートが掛けられた建物が目立つ住宅街=2019年9月15日(本社ヘリ「あさづる」より)


 豪雨や大地震などの災害後、けがや避難生活の負担が原因で死亡する「災害関連死」の認定を巡り、政府は認定作業を担う自治体から要望が寄せられている統一的な基準を策定しない方針を固めた。代わりに2020年度中をめどに、過去の認定例などをまとめた「事例集」を作成し、自治体に提供する方針だが、認定状況のばらつきは解消されそうもない。(中根政人)

◆昨年の台風15号で8人が災害関連死に

 9日に千葉県上陸から1年となった昨年の台風15号では、同県内で8人が災害関連死に認定された。停電による熱中症やその疑いで亡くなった人などだ。11年の東日本大震災では、東京電力福島第一原発事故で避難が長期化した住民の関連死が相次ぎ、福島県では「直接死」の人数を超えた。16年の熊本地震でも、直接死の50人を大幅に上回る220人に達した。
 災害の直接死に対する関連死の概念は、1995年の阪神大震災で生まれた。関連死の認定作業は県や市町村が担い、それぞれ有識者らの審査会で、災害との因果関係が認められた死亡事案を災害弔慰金の支給対象にすることで認定してきた。

◆差が開く災害弔慰金の認定率

 認定状況は自治体ごとにばらつきがある。東日本大震災の約2年後、日本弁護士連合会が実施した被災自治体のアンケートで、当事者らの申請に対する災害弔慰金の認定率は福島県86%、宮城県76%、岩手県は60%と差が開いた。弔慰金をもらえなかった死亡者の家族が訴訟を起こすケースもあり、自治体から「国が認定基準を設けてほしい」との声が上がった。
 内閣府は要望を踏まえ、昨年4月に「災害による負傷の悪化や避難生活での身体的負担による疾病で死亡し、災害弔慰金の支給対象と認められた人」との関連死の定義をまとめた。具体的な認定基準の策定に関しては、これまで可否の明言を避けてきたが、内閣府の担当者は取材に、災害の種類や地域的な事情の違いを理由に「一律の認定基準を示すことは不可能だ」と説明する。

◆被災者が不利な扱い受けないように

 内閣府が作成予定の事例集では、東日本大震災や熊本地震など過去の災害関連死の事例を収集・分析して整理する考えだが、自治体ごとに判定する仕組みは変わらない。
 広瀬弘忠・東京女子大名誉教授(災害リスク学)は「災害関連死の認定では、自治体の財政力や調査能力によって差が出る傾向がある。災害弔慰金の支給に関して被災者が不利な扱いを受けないよう、政府は事例集だけでなく、指針などの策定に取り組む必要がある」と指摘する。

 災害弔慰金 災害弔慰金災害によって死亡した人の遺族に500万円を上限に弔慰金を支払う制度。都道府県と区市町村が4分の1ずつを負担し、残りは国の負担。建物の倒壊による圧死や津波・洪水での水死など「直接死」だけでなく、けがの悪化や避難生活での疲労・ストレスが原因で、災害から一定期間後に死亡し、災害との因果関係が認定された場合は「関連死」と扱われ、弔慰金が支給される。

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