鬼怒川決壊から5年、コロナ禍の再建「くじけない」 壊滅的な被害の花き生産販売会社

2020年9月10日 05時50分

水害を乗り越え、花きの生産販売を再建した高橋敏明さん=常総市原宿で


 関東・東北水害で茨城県常総市の鬼怒川の堤防が決壊してから、10日で5年。堤防は再整備され、市民は日常を取り戻したかのように映る。浸水で壊滅的な被害を受けた花き生産販売「フラワーセンター紫峰園」を経営する高橋敏明さん(66)も一歩ずつ、再建を進めてきた。だが今年は、新型コロナウイルスが行く手を阻む。それでも「くじけるわけにはいかない」と前を向く。(林容史)

◆10万鉢ほぼ全滅、被害額は5000万円超

 「これが修羅場なのか」
 鬼怒川から1キロ弱にある16棟のビニールハウス。当時、避難所から駆け付けた高橋さんは、その光景に絶句し立ち尽くした。
 丹精込めて育てたポトスなどの観葉植物が流されたり、倒れて泥をかぶったりしていた。「この道ひと筋45年。一生懸命、愛情を注いできた」という10万鉢がほぼ全滅し、被害額は5000万円を超えた。
 利益がたくさん出る商売ではない。新たに借金を抱えて再建しようとは、とても考えられなかった。
 だが、全国から来た何百人ものボランティアが泥かき、洗浄、廃棄物の処分を手伝ってくれた。一緒に働いてきた長女の明子さん(41)には「これぐらいであきらめちゃ駄目」と諭され、気持ちを奮い立たせた。

◆「お世話になった人たちに恩返しを」

鬼怒川(左側、上方が上流)の堤防が決壊し、濁流が流れ込み冠水した住宅地=茨城県常総市で、本社ヘリ「あさづる」から

 残った親木から優良な木を選んでは、挿し木でこつこつ繁殖させ、栽培を再開させた。「水害前ほどに回復するのは無理だが、お世話になった人たちに『再興できました』と報告するのが恩返しになる」。従業員たちのことも考え、短期間で販売できる品種を仕入れるなど工夫し、どうにか経営をつないできた。
 復旧への光が差し込んでいたところに、新型コロナウイルスの感染拡大が立ちふさがった。外出自粛で、贈り物やイベントなどで需要が増える3~5月の繁忙期を棒に振った。在宅勤務が増え、事務所や店舗からの注文もなくなった。

◆花と緑で社会に潤いと豊かさを

 水害に続くコロナ禍に「いつ何が起こるか分からない」と嘆きつつ、「社是は、花と緑で社会に潤いと豊かさを提供すること。それを実現したい」とあきらめるつもりはない。
 高橋さんは、全国で毎年のように繰り返される水害に心を痛める。「水害は人災の面もある」と感じているからだ。高橋さんのハウスがある地区は元々堤防がなく、砂丘林が自然の堤防となっていた。だが、掘削に許可を必要とする区域に国が指定せず、豪雨前に民間業者が太陽光発電事業で砂丘林を掘削した結果、「無堤防」状態になり、水があふれ出たとみている。
 堤防を管理する国に不備があったとして、高橋さんは周辺住民らと2018年8月、建物の損害や慰謝料など計約3億3500万円の支払いを求めて、水戸地裁下妻支部に提訴した。
 「国中の至る所に危険箇所があるのに、対策を怠ったために大災害につながっているケースもある。ダムを建設する前に、優先順位を付けてやるべきことがあるはずだ」と警鐘を鳴らし続ける。

 関東・東北水害 2015年9月9日に愛知県に上陸した台風18号により、関東・東北地方を中心に被害が出た豪雨災害。宮城、茨城、栃木3県で災害関連死を含め20人以上が死亡。茨城県常総市内では鬼怒川の堤防が決壊し、市域の約3分の1に当たる約40平方キロメートルが浸水。関連死を含め15人が死亡し、4000人以上が救助され、住宅5163棟が全半壊した。

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