道徳の教科化、歴史教科書の検定で「教育に介入」 現場と溝<安倍政権 緊急検証連載>

2020年9月10日 14時25分
<一強の果てに 安倍政権の7年8カ月(8)>

2017年、検定で「国や郷土を愛する態度」を学ぶ教材として「パン屋」から「和菓子」に修正された、変更前の東京書籍の小学1年生の道徳教科書

◆「押し付けに抵抗感」

 2018年4月、小学校で「道徳の時間」が「特別の教科」に格上げされた。いじめ問題への対応が発端だったが、「特定の価値観の押し付けにつながらないか、抵抗感があった」。都内公立小学校の女性教諭(60)は振り返る。
 「教育の目的は、志ある国民を育て、品格ある国家をつくること」。安倍晋三首相は著書「美しい国へ」(13年「新しい国へ」に改訂)で誇りを持てる国にする意欲を強調。第1次政権では06年に愛国心や郷土愛などを書き込んだ改正教育基本法を成立させた。
 道徳の教科化は一次政権で果たせなかったものの、2次政権発足直後の13年1月、安倍首相の私的諮問機関「教育再生実行会議」が発足。保守系の論客も参加し、道徳の教科化、教育委員会改革などを次々と提言した。安倍首相は「強い日本を取り戻していくため、教育再生は不可欠」と力を込め、「盟友」の下村博文文部科学相(当時)らとともにトップダウンで教育政策を実現していった。

◆教科書会社を萎縮させる恐れ

 安倍政権では、社会科教科書の検定基準を改定。南京事件などを念頭に、特定の事柄を強調しすぎず、通説的な見解がない場合はそのことを明示し、政府見解や最高裁判例に基づいた記述をすることを求めた。
 ただ「通説的見解」など基準は不明確で、教科書会社を萎縮させるなどとして、日弁連が「過度の教育介入で子どもの学習権を侵害する恐れがある」と指摘。「子どもと教科書全国ネット21」の鈴木敏夫事務局長は「安倍政権は教育に介入し『自虐的だ』とする歴史の内容を教科書に書かないように改めた。政府にとって都合のいいようにゆがめた」と批判する。

◆大学入試改革は看板倒れ

 幼児教育無償化や高等教育の修学支援など格差解消も目指した安倍政権。一方で、大学入試改革は看板倒れになり、来年から始まる大学入学共通テストでの英語民間試験の活用、国語と数学の記述式問題の導入は見送られ、受験生から「混乱に巻き込まれた」と恨み節が上がった。新型コロナウイルス対策では、学校や保護者の準備が整わないまま、突然の全国一斉休校を要請し、混乱を招いた。
 道徳の教科化後、各学校は国の検定教科書を使い、通知表で児童がいかに成長したかを記録する記述式の評価をするようになったが、点数化やほかの児童と比べることはしていない。
 女性教諭は「評価は難しい。教科書には責任や自己犠牲などの色合いが濃いと感じられる読み物もある。いじめ自殺がきっかけで教科化されたが、いじめはそんなに単純な問題ではない」と、政治の教育現場への安易な介入に警鐘を鳴らした。(土門哲雄)
=おわり
◆<安倍政権 緊急検証連載>

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