対応後手、遠い全容把握 ドコモ口座不正引き出し

2020年9月11日 06時00分
部銀行との連携停止を示す「ドコモ口座」のウェブ画面

部銀行との連携停止を示す「ドコモ口座」のウェブ画面

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 電子マネー決済サービス「ドコモ口座」を悪用した預金の不正引き出しが多数見つかった問題で、NTTドコモは安全性確保の肝となる本人確認に不備があったことを認め、謝罪に追い込まれた。対応が後手に回り、ようやく記者会見を開いて副社長が説明に応じたものの、不正の手口をはじめ全容解明には程遠い状況だ。ドコモ口座と連携する銀行の間でも被害の有無で明暗が分かれ、隙を突かれた地銀などに批判の矛先が向かう。

◆ドコモ副社長、落ち度認め謝罪

 「こちらの本人確認が不十分だった」。ドコモの丸山誠治副社長は十日の会見で、自社の落ち度に繰り返し言及した。一連の問題が発覚して以降、ドコモが公の場で事実関係を説明するのはこれが初めてだ。この間、預金の不正引き出しは全国に広がり、被害総額が一千万円を超えるなど事態は悪化の一途をたどっていた。
 不正が明るみに出たのはインターネット上の書き込みが発端だ。ドコモや連携先の銀行はこれまで積極的に事実関係を公表してこなかった。十日の会見では被害者や関係官庁に真摯に対応することを強調し、批判を和らげようと躍起になる姿勢がうかがえた。
 今回と同様の預金引き出しは、りそな銀行で昨年五月に発生していたことが新たに発覚した。当時の対応のまずさが再発を招いた疑念は拭えない。「当初は銀行口座と名義が一致しなくてもいいという緩い形で運用を始めたが、一致を確認するなどセキュリティー上の問題を改善してきた」。丸山氏はそう釈明するのが精いっぱいだった。
 だが、この日の会見で判明した事実はそれほど多くない。口座番号などの預金者情報が盗み出された手口など、肝心部分は未解明なままだ。
 被害防止の対策として、銀行口座との新規のひも付けは全面的に止めたものの、既にひも付けられた口座からのチャージ(入金)は今も一部で続いている。被害が拡大する可能性を問われると「ないとは言えない」(前田義晃常務執行役員)と答えるほかなかった。
 今後、被害者への補償も急務となるが、銀行側との負担割合の調整は難航が予想される。

◆「二段階認証」なし、生体認証採用せず…銀行側にも不備

 銀行側の不備も指摘される。被害に遭った地銀などでは成り済ましを防ぐ「二段階認証」の仕組みを設定していなかった。ゆうちょ銀行は、自社のインターネットバンキングからの送金では導入している生体認証などの仕組みを、ドコモ口座への送金では採用していなかったことがあだとなった可能性がある。
 現時点で無事が確認されている西日本のある地銀の役員は「被害が出ているのはセキュリティーの甘い銀行だ」と突き放す。
 金融庁は、NTTドコモと銀行側が被害補償に最優先で取り組むべきだとの立場だ。ドコモ口座を持たない人も被害に遭っていることから、同庁幹部は「一義的には銀行の責任という気がする」と指摘。ドコモに対しては資金決済法に基づき報告徴求命令を出し、全容把握に乗り出した。
 銀行界からはドコモに対して不満の声も漏れる。大手銀行の中堅幹部は、ドコモ口座が銀行口座とひも付いているにもかかわらず、ドコモが本人確認を厳格にしていなかった点を問題視し「マネーロンダリング(資金洗浄)にも使われかねない。(決済サービスを担う)資金移動業者としての自覚がないのでは」と非難した。(共同)

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