敵基地攻撃能力、装備取得に膨大な費用 警戒衛星、ステルス機など
2020年9月12日 05時50分
安倍晋三首相が11日の談話で必要性を指摘した敵基地攻撃能力。実際の攻撃には、発射の兆候を監視する早期警戒衛星や、防空網をかいくぐるステルス戦闘機など多くの高額な兵器が必要だ。年5兆円を超える防衛予算の膨張に拍車が掛かりかねない。(山口哲人)
敵基地攻撃では、まず相手国の弾道ミサイル発射地点を正確に把握しなければならない。北朝鮮のミサイル発射台は発見しにくい移動式が増え、近年は場所を特定しにくい。このため、早期警戒衛星により宇宙空間などから常時監視することが必要になる。日本が独自に衛星を保有すれば、年間850億円かかるとの試算もある。
目標を攻撃するため、自衛隊の攻撃機が相手国領域に侵入するには、相手国のレーダーや通信を電波で妨害する電子戦機が必要だが、日本は保有していない。防空網はステルス機でかいくぐることになる。電子戦機もステルス戦闘機も1機の取得費で100億円を超える。取得後には機体の維持管理費や、隊員の訓練費もコストに加わる。
仮に日本が敵基地に攻撃を加えた場合は、相手国が別の場所から弾道ミサイルなどを発射して反撃してくる可能性が高い。空自関係者によれば「敵基地攻撃で全てのミサイル基地をたたくのは不可能」なため、反撃に備えた地対空誘導弾パトリオット(PAC3)などの拡充も迫られる。際限のない軍備の拡大につながる恐れがある。
敵基地攻撃能力を巡る今後の政府・与党の協議では、従来の方針との整合性も問われることになる。
政府の防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」は1995年以降、5回の改定を重ねたが「憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならない」との基本方針を明記し、安倍政権が2018年に策定した現大綱まで維持してきた。敵基地攻撃能力を保有する場合、大綱の記述変更の有無についても説明が求められる。
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