危機乗りきる知恵とは 『中年の本棚』 ライター・荻原魚雷さん(50)

2020年9月13日 07時00分
 かけだしのライター時代、編集会議の席でほとんど喋(しゃべ)らず、最後の最後にまとまりかけた企画をぶち壊すような発言をしてしまうことがよくあった。それでついたあだ名が「魚雷」。このペンネームをつかいはじめて、三十余年――今は古本に関する随筆や街道歩きの紀行文を書いている。
 三十代半ばごろ、会社勤めの経験がなく、社会不適応を克服しないまま年を重ねた結果、なんとなくうまく年がとれていないような気がしていた。若手でもなく、かといって、貫禄や威厳や経験があるわけでもない。そんな中途半端な時期を乗りきるにはどうすればいいのか。その答えを探すために「中年本」の収集をはじめた。
 文学、野球、将棋、サブカルチャー、漫画……。中年が主人公の作品、中年向けの人生論、中年の貧困問題を分析する新書なども取り上げた。『40歳からの〜』『50歳からの〜』といった本も合わせると、数え切れないくらいの「中年本」が刊行されている。
 中年の問題のひとつに肉体と精神の不調和がある。若いつもりでいてもからだのあちこちにガタがくる。寝ても疲れがとれない。これといった理由はないのに気が滅入(めい)る。若い人たちの新しい表現がピンとこなくなる。
 「四十初惑」と唱えた各界の第一人者たち。「とりあえずお昼」「とりあえず寝る」と気を取り直す田辺聖子。「年を取っても『さらに長く生きたい』『楽しい』と思えるカギはなんなのだろうか」と問う漫画『たそがれたかこ』の主人公。「節制しても五十歩百歩」と開き直る色川武大(いろかわたけひろ)。三十歳をすぎたら「『誰かになにかをしてあげる』側」になるというジェーン・スー。中年世代は「板挟みとも違う……板はあるけど、挟んでもらえない」と嘆く山田ルイ53世。
 中年になってはじめて知ることはたくさんある。
 五十歳になった今、休むことの大切さを痛感している。疲れていると、どうしても悲観しがちになる。中年の身にふりかかる大小様々な厄介ごとは休み休み考えるようにする。中年期以降の問題の大半は心身の疲労と関係している。
 「中年の危機」で不安になったらまず休養――たぶんそれが正解だ。=寄稿
 紀伊國屋書店・一八七〇円。

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