日本語非常勤講師が苦境、留学生来日できず収入減

2020年9月13日 06時00分
 新型コロナウイルス感染拡大による入国規制の影響で外国人留学生が来日できず、日本語を教える大学非常勤講師が不安定な立場に追い込まれている。秋からの授業も開講されず、収入は大きく減少。「来年度はどうなるのか」と不安を募らせている。(土門哲雄)

原則オンライン授業が続く千葉大。日本語を教える非常勤講師の収入が途絶える恐れがあった=千葉市稲毛区で


◆突然「講師料支払わない」…非常勤の立場の弱さを痛感

 「授業が開講できなくなった場合、講師料の支払いはありませんので、ご了解ください」
 千葉大の非常勤講師、清水由美さん(62)は8月6日、専任教員からこんなメールを受け取った。
 3つの大学を掛け持ち、前期はオンライン授業に対応するため、新しいパソコンやマイクを購入し、スライドやチャットを活用して「学生たちに良い授業を」と、朝から晩まで自宅で画面と向き合った。
 メールが届いたのは、後期の準備を進めていたさなか。「この労力がまったくの無駄になるかもしれない」とがくぜんとした。
 9月になり、大学の担当課から一転して「全額支給」とのメールが届いた。しかし、こうした場合の学内の取り決めがないことも判明。「おかしいと思っても声を上げられなかった」という非常勤講師の仲間もいた。非正規雇用の立場の弱さを実感している。

◆授業減が収入減に直結

 労組関係者によると、非常勤講師の収入は週1コマ当たり年間30万円ほど。受け持つコマ数が減ると収入減に直結する。
 首都圏の4大学で週17コマの授業を受け持つ別の非常勤講師の女性(59)は、既に秋から12コマが開講されないことが決まっている。
 都内の私大からは4月半ば、学長名のメールで突然、進学予備教育の留学生別科を1年間休校にすると告げられた。女性は「まる1年授業がなくなるとは」と困惑している。
 別の首都圏の私大からも7月、後期の交換留学生受け入れが中止になったと連絡があり、さらに「来年度はコマ数が減る」とも伝えられた。
 これらの大学は、学内の規定で「不開講手当」を2~3カ月分としているが、今回は6割を支払うという。ただ、大学によって対応はまちまちで、6割に満たない大学もあるという。

◆不服も言いづらく…

 日本語学校はさらに厳しく苦境にあえぐ。今年は学生が極端に少なく、来年度に日本の大学へ進学する私費留学生は大幅に減る見込み。女性は「留学生が多くを占める大学は経営難に陥るのでは」と危ぶむ。
 関西地方の4大学で非常勤講師を務める浦木貴和さん(54)は、龍谷大(京都市)から7月に交換留学生の受け入れ中止を伝えられ、「もっと早く連絡をもらえたら、ほかの仕事を探すこともできたのに」と憤る。
 1年契約の非常勤講師は身分が不安定で、契約期間が通算5年を超えないと無期雇用への転換権が得られない。浦木さんは「大学や専任教員ともめたくないので、大学側に不服を言いづらいという人も多いと思う」と懸念している。
◇        ◇

◆労基法では6割以上の支払規定

 労働問題に詳しい指宿昭一弁護士によると、不開講となっても、使用者の責めに帰すべき事由があれば、民法536条2項に基づき、講師は講師料を全額請求できる。さらに「不開講手当などの定めがある場合、その定めによるが、労働基準法26条で使用者は平均賃金の6割以上を支払わなければならない」と説明する。困ったら労働組合や弁護士への相談を勧める。
 国は、雇用を維持するため、事業主が支払った休業手当の一部を国が補う「雇用調整助成金」の上限額を引き上げるなどしている。
 厚生労働省雇用開発企画課の担当者は、大学に雇用されている非常勤講師の不開講手当についても「実態に即して休業手当に準じ、要件を満たせば雇用調整助成金の支給対象となる可能性がある。個別具体的なケースによる」としている。

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